episode⑥-5

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episode⑥-5

ずいぶんと大きな街だった。 この前とは大きさも人の数も違う。 なんだか…目移りするなぁ…。 それにしても さっきから僕の脳裏に声が聞こえてくるような 気がするんだけれど…。 なんだかとても小さくてよく聞こえないや。 とうさまかチャンミン兄さまかな??? 後で連絡してみようっと。 そこにはとてつもない『結界』が張られていた。 「くそっ!なんてきつい結界なんだ…!! ヒョン…これじゃあ、2人で入るのは無理ですね」 「チャンミナ…悪いが、 ここで待っていてくれないか?」 「ヒョン…1人で行く気ですか!?」 「ああ。」 「そんな…無茶ですよ!!」 「大丈夫だ。チャンミナ、おまえはここから ユノヤに気を送ってくれないか?」 「わかりました。でも、1人で大丈夫ですか?」 「ああ。すまないな、おまえにまで」 「何を言ってるんですか! 僕にとってもユノヤはかわいい甥なんですよ!!」 俺はチャンミンの肩を軽くたたいた。 「後を頼むぞ、チャンミナ」 「ヒョン、気をつけてください…!!」 俺は体に気を集中させると 一気にその結界の中に入っていった。 街の中心部に大きなクラブがあった。 …鼻が利く。 たぶん、ここに獲物がいるぞ。 僕はゆっくりとその中に入っていった。 耳をつんざくような爆音の中 大勢の男女が踊るフロアを抜けると 奥にカウンターがあった。 そこにオンナが1人、座っている。 オンナの隣に座って、僕はバーテンダーに注文した。 こんな場所で酒なんか飲んだことなんかないけど、 なんとなくやり方はわかるのが不思議だ。 「アレキサンダー」 僕の声にオンナがこちらを向く。 とびきりのいいオンナ…だ。 このオンナの血を今夜はいただくぞ。 オンナがふいに微笑んだ。 「ここでは見ない顔ね」 「ああ。この街は初めてだ」 「だから…」 オンナはおかしそうに笑った。 「あたしの隣に座っちゃったのね?」 「え…?」 オンナがそっと僕の耳元に顔を寄せた。 ふんわりとスモーキーな香りが、する。 「早くここから離れた方がいいわ」 「何で?」 「でないと…あんた、殺されるわよ」 「は?」 途端に僕の両肩をむんずと掴む手があった。 …つ、強い…!!! 「坊主、おまえどこに座ってんだ?」 振り返ると 僕よりはるかにデカイ男。 しかも、この力… こいつ…人間じゃない。
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