episode⑥-8

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episode⑥-8

あれは確か…僕もまだ狩りを 始めたばかりの頃だった。 ジソクさんはその日、狩りをしにきていたようだ。 それは彼の縄張りではない街…。 ただね… ユノヤ…おまえと違って ジソクさんは縄張りのことを当然知っていた。 一族のリーダー格だった彼は 縄張り拡大のために わざとその街に入ったんだ。 でもその街には とびきり強いヴァンパイアがいてね…。 手下も1000人は超えていた。 1人で乗り込んでいったジソクさんは 返り討ちにあったんだ。 ヒョンがたまたまそばを通りかかった時、 ジソクさんはそいつらににボコボコにされていて 虫の息だった。 ヒョンとジソクさんはその時が初対面だった。 当然ヒョンも縄張りのことは知っていたから ジソクさんが掟を犯してきたことはすぐにわかった。 普通なら、手出しするようなことじゃない…。 ただね… 昔から多勢で1人を攻めるような行為が ヒョンは大嫌いだったから 1人でジソクさんを救いに行ったんだ。 「ユノヤ…ヒョンは何人のヴァンパイアを 倒したと思う?」 「え…100人くらい…?」 「いや。」 僕はニヤリと笑った。 「全部さ。」 「全部…って、まさか…!!」 「そのまさか、だよ。 ヒョンはあの街を縄張りにしていたヴァンパイアを すべて1人で倒したんだ」 ユノヤが息を飲むのがわかる。 「おまえが初めて狩りをした街があるだろう?」 「うん…」 「あれがその街、さ。」 「すごい…!!」 ユノヤが大きな目をキラキラさせながら 僕の話を聞いているのをみると 僕にもこんな時があったなあ…と あらためて思う。 「それで、とびきり強いヴァンパイアは どうなったの??」 「もちろんヒョンは倒したよ」 「そうなんだ…」 「そのヴァンパイアはヒョンの強さに すっかり魅了されてね…」 「うん…」 「ヒョンの元で働きたいと言い出したんだ」 「え…??」 「ほら。おまえのそばにいるよ」 僕は庭を指差した。 そこにはバラの苗木に水をやる1人の人物が… 「え…トーマスのこと…????」 「ああ。この城で働く者たちの大半は その時の手下さ。」 「とうさまって…」 「ん?」 「本当に…強いんだね…」 「ああ、最強だよ」 心も体も…な。
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