2 フィールドワーク

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2 フィールドワーク

 そんな僕達は、今日、現地確認(フィールドワーク)として選んだのは、学校のある東京から特急ひたちに乗り常磐線でおよそ108分にある駅から、これまた、持ち込んだ折り畳み自転車で15分の場所にいる。 鉄道のマニア、鉄ヲタは非常に細分化されている。乗るだけ、音取り、写真、廃止、廃線、駅弁種々沙汰。ヲタの数だけジャンルがある。そして、僕達は特急ひたちに乗っていても別に普通だ。窓際の美人会長は乗ってすぐに口を開けてよだれを垂らしながら寝ておられたし、僕はスマホで映画を鑑賞してきた。乗る方に特別な思いは無い。 このフィールドは、常磐炭鉱が元々栄えていた場所であって、茨城北部から福島南部の常磐線の各駅には例外なく引き込み線があって、いや、あったので、そこから、山側へ進めば何かしらの廃線の痕跡は望めるのだ。 今回、僕たち廃会のフィールドワークに選んだこの街の廃線は実に珍しい。 何が? 駅から炭鉱の坑口まで5km程、そこまで引き込み線は有るのだが、不思議な事に駅から引き込み線が二本出ていた。一本は駅の北から、もう一本は西から、そして、ほぼ同じ方角へと平行に、時折数m程の間隔で西進し、暫くすると200m程離れて、駅から4km程で、それは、突然、平面クロスするのだ!! 北側から伸びた引き込み線はそのままに、西から伸びた引き込み線はR200を経て、北へと方向を変える。 平面クロスですよ。平面クロス!!素晴らしい、平面クロス……ロマンだ…… おっと、置いてきぼりにしそうだ。これでは美咲殿と何ら変わらん。 平面クロスとは立体交差していない、つまり、線路と線路がある地点で直交すると言う無謀な計画の果てに出来上がった時代のあだ花。今どき、国内でも1か所くらい、せいぜい、プラレールくらいでしか再現できないものだ。 僕は分岐(ポイント)萌えなのだが、もっと言えば、遠く本線から離れていく景色に哀愁を感じてしまうのだ。こう……なんか、ああ、このまま、人生と同じで、永遠に別れてしまうんだな……もう会えないんだな的な感傷を伴うところに悶えている。 ロマンだ。うん、分からなくて結構。 そして、さらに、平面クロスは特別だ。直交するなど、同じ軌道で逃げ場のない鉄道において、あるまじき選択、究極の安全無視、そう、その平面クロスはこの先、200m先にあるらしい。 特急でおよそ2時間かけてまで見に来る価値はそこにある。
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