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 再び砂煙が眼前を舞った。爪攻撃の前兆だ。 「イッサクジツは決まって右から襲ってくるよ!」 ボスの名前がイッサクジツ。こんな窮地でも笑えるな。 耳を澄まして、巨体の動く音を感じ取る。視界右側に黒い影が。 「ここだ!」 剣は空を切った。一昨日の記憶のように実体は不確か、か……。 「危ない!」 少年の叫び声と同時に、二本爪が姿を現した。 それは俺に向かって、容赦なく振りかかってくるではないか。  粉々になった盾と引き換えに、俺は運よく生きながらえた。 亀裂のおかげで、かえって衝撃を分散できたな。 だが、ここからどう戦術を展開していけばいい? 「イッサクジツの動きにヒントはあるから!」 そうか! 奴は必ず砂煙を発生させてから、攻撃段階に入る。 「分かったぞ!」 そうこうしているうちに、またもや巻き上がった砂が視界を覆う。 爪が勢いよく出てくる前に、事を起こさなければならない。 俺はタイミングを計って、前転で砂煙の左側から抜け出した。 だが、イッサクジツの姿は相変わらず、俺の眼では捉えられない。 「一昨日の夜を自力で思い出さないとダメらしいな……」 ボスのイッサクジツは、一昨日という存在そのものを具現化した魔物。 そして、奴がいるこの場所の名前は、夜の間。 一昨日の夜の出来事、本当は最初から忘れてなんかいなかった。 ただ俺が、自分に都合のいいように、記憶の奥底に閉じ込めていただけなんだ。
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