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5
「これが転送ボックス……」
予想していたよりもずっと大きい。
最新の技術を結集して完成させた代物なのだろう。
「おじさん、まだダンジョンは終わりじゃないからね!」
「分かっている。一昨日に帰って、
ダンジョンに来る原因となった出来事を当てるんだろう?」
「そう! 見つけられなくて、またここに戻ってくるのは許さないよ!」
少年が快く見送ってくれると、こちらも未練なく現実世界に戻れるってもんだ。
しかし、最後の言葉は、彼の口から流暢に出てきてはいなかった。
錆び付いた重い扉を、俺は力ずくでこじ開ける。
閉め切ってしまう前に一言だけ。
「任せとけ」
扉のガラス窓越しに、少年が健気に手を振っている。
「おじさんと冒険できて、僕すっごく楽しかった!」
泣いて別れるのは好きじゃない。
けど、今日だけは自分のポリシーに反してもいいかな。
「俺もさ」
頬が優しく濡れるのを感じながら、俺の意識は少しずつ遠のいていった。
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