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 「あ、いた!」 少年が指差す先で何かが蠢いている。 俺は正体を探るよりも先に、無我夢中で剣を振るった。 切れた感触が微かに手に伝わってくる。 それが、かつて夢見た勇者に自分がなっていることを強く実感させた。  「木の葉の断面って初めて見たよ!」 確かな手ごたえがあったはずなんだけどなぁ。 まさか風に吹かれ飛ばされてきた木の葉と、必死に戦っていたとは。 「でも、剣の使い方はこれでバッチリだよね!」 少年のポジティブな性格は見習わなければならないな。 「あ、またいた!」 「よっしゃ、今度こそ……」 木の葉。切り出す前に確認。木の葉。 自然の産物を無駄に痛めつけたくはない。  「魔物がいたよ!」 「よし、本物だな」 一本角の生えた小さな魔物が岩陰に隠れている。 長年プレイしているテレビゲームの要領でいくぞ。 雑魚敵に盾はいらない。剣を片手に切り込むだけだ。
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