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3
昼の間と言っても、先ほどと変わらない暗闇がずっと続いている。
「昼の欠片は確か宝箱の中にあるはずだよ!」
魔物を討伐する必要がないのは、疲労の溜まった身体に嬉しい。
しかし、目の前にある宝箱は二つ。
優柔不断な俺には、この二択すら関門として立ちはだかる。
「間違った宝箱を選んだら、中にいる魔物の呪文で、
一昨昨日ダンジョンに強制移動になるから慎重にね!」
一昨昨日の記憶はさらに朧げだぞ。
難易度も跳ね上がるに違いない。ここで正解しておくのが賢明だろう。
勇者の立場で言及するのもおかしいけど、
左の宝箱の鍵穴から見覚えのある角が飛び出しているのは大丈夫?
俺の背後で慌てふためく少年の姿には、どことなく愛おしさがある。
迷いながら選んでほしかったようだが、俺の観察眼を甘く見てはいけない。
「右を選ぶとするよ」
俺は少年から鍵を貰い、右の宝箱を開けた。
案の定、こちらが正解。手に取った昼の欠片が額にすっと入り込む。
「一昨日の昼はどんな楽しいことしたの?」
そうだ、一昨日の昼は……起きていた!
どうも欠片の効力が小さい。起きていることは、流石に覚えていたぞ。
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