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結婚式殺人事件
木曽有子は高校の同級生の結婚式に来ている。高校時代に仲良くしていた、丸田美千代と二人人で、白木亜紀子の結婚式に参列する。白木亜紀子は仲良し四人組の中で、一番先に結婚する。
もう一人の親友、八幡淳子は、この結婚式場のスタッフ。可哀想なことに親友の結婚式だというのに、出勤を命じられて、受付の側でウェルカムドリンクを配っている。
それでも八幡淳子は明るく亜紀子に言った。
「親友のお式だから、いつもより頑張って盛り上げるから」
結婚式で全員が揃わないので、白木亜紀子が式の前にみんなで食事会をしようと誘ってくれた。淳子が式に出られないことを残念がった亜紀子に、淳子は最高のおもてなしをするからと宥めていた。
そして、式当日。
「いいな、こんな豪華な会場で私も結婚式したいな」
美千代がはしゃぎながら有子に言う。
「本当に綺麗だよね。西洋のお城みたい」
有子も豪華なシャンデリアや立派な調度品を見て、笑い返す。
「二人とも是非とも当式場でお願いしますよ」
ウェルカムドリンクを配っている淳子が、すかさず営業をかけてくる。淳子は、有子と美千代にウェルカムドリンクを手渡す。
二人が、その小さなグラスに入ったシャンパンを飲み干した瞬間…。
会場のロビーのシャンデリアが消え、辺りは暗闇に包まれた。
「キャア!」
「停電?」
受付ロビーがざわめく。
「ただいま原因を確認して参ります。お足元が危ないので、そのままお待ちください」
淳子のきびきびとした声が響く。
10分ほどで、停電は復旧した。有子が隣にいるはずの美千代を見ると、彼女は絨毯の上に突っ伏して、絨毯の繊維をむしり取るような格好で息絶えていた。
ロビーは混乱と絶叫に支配される。
有子は、美千代の頸動脈に手を当て死亡を確認すると、
「全員、その場を動かないでください。県警捜査一課の木曽有子と申します。手を頭の後ろで組んで。手を動かした場合、証拠隠滅の疑いを掛けられますよ」
自分でも驚くほど冷静に、会場の全員に釘を刺していた。そして、ロビーの真ん中に立つと、
「今から110番します。私が携帯を取り出す事以外、怪しい動きがないか皆さんで見張ってください」
そう告げると、結婚式用の小さなクラッチバッグからスマホを取り出して110番を押した。
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