危険な男

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危険な男

夜の9時、人盛りでいつものように賑やかな東京新宿、その新宿で奥の道から歩いてくる男達がよく見ると周りの人達が避けていくのがわかった、酔いつぶれ戯れていた若者達は一瞬で酔いが治った、「あれヤバイよな、絶対にヤバイ人たちだって」 さっきまでの賑やかさは、男達が歩いている瞬間に静まり返った、すると前で歩く大男は急に横に曲がり近くのクラブに乗り込んでいった。 「おぉ!遅かったじゃねぇか松岡」 入り口付近には同じ神田組に属す舎弟が立ちすくっていた、松岡は会釈だけ返し中のクラブに入ると、奥のVIP室に座る神田のもとへとすぐに松岡達は向かった、VIP席のある部屋の前にはピンクのカーテンの用な物がありそれを捲り中に入るのだが、部屋の中から聞こえてくる神田とあともう一人かの誰かが女達と騒がしく飲んでいるのが聞こえてきた、「お待たせしてすいません」 意を決して松岡は中に入ると、さっきまでの騒がしさが急に消えた、すると女達の間に座る神田は笑顔で応えた、「随分と遅かったな、松岡」 「すいません、例の件を処理するのに若い奴らの手間がかかりまして」 「まぁいい、お前もさっさと飲め」すると神田は近くに置いてあったボトルを差し出した、「頂きます」 頭を下げボトルを手にとると神田の横にいた大川がグラスをすぐに松岡のテーブル近くに用意した、「兄貴、会長の件はよくわかりました、これから更に島を拡大して」 「バン!」 松岡が話しているといきなり神田が手にしていたグラスを強くテーブルに置いた、思わず大川も、女達も驚いた、「松岡、他にすることがあるだろ」 「他にですか?」 思わず松岡は言葉が出なかった「会長が消えたら、後継ぎは誰になるんだろうな」神田はニヤニヤしながらソファアにもたれ込んだ、「松岡、期待してるぞ」 松岡は苦笑いで応えた、すると、入り口付近から大きな物音がしてきた、「なんだなんだ!」思わずVIP室から出ると、店のカウンターで先程入り口で警護をしていた舎弟が何者かに、床に押さえつけられていた、「何すんだコノヤロウ!」 すかさず取り押さえている男を見ると、そいつは眞鍋の姿だった、 「眞鍋!何であんたが」神田は思わず驚きを隠せなかった、「久しぶりだな、神田」 松岡や大川は思わず腰に着けた拳銃を抜こうとするのを慌てて神田は止めた、「待て!お前ら、用件はなんだ」すると暫く床に押さえつけていたのを止めて立ち上がった、「ここではあれだ、別ん所で話しようや」 眞鍋は乱れていたスーツを整え神田に着いて行った。 眞鍋と神田の二人しかいないVIP室の中はさっきまでとは打って変わり張り詰めた空気が漂っていた、神田は不安な表情を見せながらくつろいでいたソファに縺れた、眞鍋は神田との対面するように椅子に腰かけた、眞鍋の表情は強い眼光を神田に見せていると、眞鍋はスーツの胸ポケットから一枚の写真を見せた、「まぁまずはこれを見ろ」 恐る恐る神田は写真を見た、「これはどちらさんですか」 白々しく神田は質問した、「この遺体のここの辺り、見えるよな」眞鍋はあの鑑識に撮らせていた薔薇の刺青が映る写真を見せつけた、「この薔薇の刺青はあんたらが体に刻んでる物と瓜二つだ」 「さぁ、同じとはなこれは又ビックリですわ!」 眞鍋は眼光をちらつかせたままニヤリと笑みを見せた、「眞鍋さん、一体何のようで内の島に?」 神田は眞鍋を視線から反らしテーブルに置かれたワインを暫く見つめた、「今この写真に映る遺体は、外務省に勤めていた中田 徹、俺は最初この遺体はお前らの敵対する組員だと思っていたが、鑑識の結果は予想とは違って政治家だった」 神田は目線を会わすことなく聞いている、だが何か冷静に装ってはいるが内心不安になっているのは、眞鍋はきずいている、「だがどうして神田組の薔薇の刺青が刻まれているのか、何か繋がりがあることはわかってる」神田は聞き反らすようにグラスにワインを入れ始めた、「中田徹に何をした」 神田はようやく眞鍋に目線を向けグラスに溜まったワインを飲もうとしたとき、眞鍋は咄嗟にそのワインを奪いそして飲んだ、「お、おい!」 ワインを飲み干すと眞鍋は問い詰めた、「お前らが殺したのか?」目の前にいる神田を睨みそして急にテーブルに強く手を打ち付けた「バン!」 思わず神田は驚いた、「どうなんだ!」、しばらく場の空気は静かになり緊張感が流れていた、神田は圧をかけ続けられても何も発する事はなかった、すると眞鍋は座っていた椅子から立ち上がりスーツの胸ポケットから財布を取り出した、「ご馳走さん、又お邪魔します」 眞鍋は財布から1万札をテーブルに置きさっきまでとは違った丁寧な言葉を神田にかけ店を出ていった、神田は眞鍋が出てからもしばらく落ち着く事が出来なかった「あの刑事、どこまで知ってるんですかね」大川はVIP室から離れた席に松岡と共に居座っていた「さぁわからんな、だが厄介な人物だと言うことはわかった」数分後静まりきった店の元の雰囲気を取り戻そうと大川は明るく場を盛り上げた。 眞鍋は店をでて新宿の大通りを抜けた所まで歩いていると妙に見覚えのある男と警察車両が一台止まっていた、「お疲れ様です」そこにいたのは市川だった、「何してたんだそこで」 市川はすぐに応えた「先輩がいきなり出ていってしまったので自分も追いかけようと」眞鍋は少し困った表情を見せた、「これは又本部から怒られるな」そうつぶやきながら眞鍋は車に乗り込んだ。 翌日の昼間、獅子神は朝の幹部会の会議を終えると運転役と二人ですぐさま蛯沢会長のいる病院へと向かった、その日はやけに雨が降りだしたり、たまにやんだりと天候が不安定だった、病室の中に入る頃には外にいるとき時は違う強い大雨が又降りだしてきた、窓に強く雨粒が打ち付ける音が鳴り響いた、獅子神は病室に入り蛯沢を見ると、この前よりもかなり弱っていた、「獅子、よう来てくれた」 蛯沢は獅子神の顔を見ると笑顔を見せた、「会長余り無理しなくて大丈夫です」 そう伝えベットの近くにある椅子に座った、「獅子、見ての通り俺はもう長くない、だからお前に頼みがある」 「はい、」 「後継ぎの事についてだ」 すると獅子神はさっきまでの優しい目付きが変わった、「お前には感謝してる、いつも俺の右腕として頑張ってくれた」 獅子神は苦笑し顔を横に振った、「だが、二代目は神田に受け継いで貰おうと思ってる」 まさかの言葉に思わず獅子神は頭が回らなかった、「あいつにはとても信頼しとる、ここまで関武連合がでかくなったのも神田組あってのお陰だと思ってる」 蛯沢は強く目線で獅子神を見つめた、「わかってるな獅子、」蛯沢は目線を会わせない獅子神の肩を強く握り顔を会わせた、「後は託したぞ!」 しばらく蛯沢の手は肩から離さなかった、「わかりました、後はもう休んどいてください」 獅子神は笑顔を見せ蛯沢の腕を優しく掴み膝の所へ戻した、そして、しばらくして蛯沢は眠りについた。 都内から少し離れた駅前の高架下、眞鍋はなかなか無い休日のなかこの辺りの焼肉店に一人入店していった、「悪かったな急に呼び出して」 「いえ、ご無沙汰してます眞鍋さん」すでに店の畳の席で一人先に肉を炭火で焼いていた壮真は、眞鍋を見つけると軽く会釈した。
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