2人が本棚に入れています
本棚に追加
見上げた君は青色。
「――――ミリっ」
ハッと顔を上げた。
そこにはぼんやりと光る顔があった。
暗闇の中に、青く照らされた顔は、見慣れた顔――。
「……タクマ?」
私の呟きに、彼はホッと息を吐く。
「ああ、よかった。ここにいて」
「え?」
彼の言葉に首を傾げる。ゴロゴロ、と少し遠くなった雷の音にビクッと震えれば、彼は私の前に座り込んで、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「帰ってきたら停電してるし、名前を呼んでも返事しないし。連絡もつかないから、心配して急いで帰ってきたんだ」
「そう、だったんだ……」
「うん。……それで、なんで連絡くれなかったの?」
「あ、それは……」
充電中だったから手元になかったことと、軽くパニックを起こして動けなかったことを語った。
私の話を聞いて、彼は一つため息を吐く。
「去年より酷くなってるし」
「し、仕方なかったんだって!」
「わかってるよ」
そう言ってタクマはふっと笑った。
彼の顔が、スマホの画面の光のせいでうすぼんやりと青く染まっている。
気が付けば嵐は過ぎ去り、電気もついた。
その時気付いたが、私が触れて倒したものは、コーヒーの入ったカップだったらしく、カーペットがすっかり茶色く染まっていた。
タクマは苦笑する。
「新しく買わなきゃなんないね」
「そうだね、ごめん」
「謝んなくていいよ。それよりも……」
私の頬をそっと撫でた彼は、微笑む。
「ミリが無事でよかった」
もう一度繰り返した彼は私の額にそっとキスをした。
思わず瞑った目の裏は、淡い青色が滲んでいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!