付き合いたてのあの頃も。

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付き合いたてのあの頃も。

 あの日はもうすっかり深夜になっていた。  吹き荒れる風。窓にぶつかる大粒の雨。遠くからは不気味な雷の音が響く。  今とは違って、まだ手元にはスマホがあったし、電気もついていた。  だけど、一人ぼっちだった。  一人暮らしの部屋はさほど広くもない。だから電気さえついていれば大丈夫だと思っていた。  だが、やはり雷が近付いてきた、と思った瞬間、電気は消えてしまった。  軽くパニックを起こして、いろんな人に電話したが、誰一人としてスマホに出ない。  ダメもとで送ったメッセージは既読もつかず……。  ――正真正銘一人ぼっち。  一人絶望しながら、ただ嵐が過ぎるのを待っていた。  その時だった。  ピンポーン――ピンポーン――……。  インターフォンが鳴った。電気とインターフォンは別なのか。  そんな疑問よりも先に、なぜこんな嵐の日に、と恐怖が襲ってくる。  ――こんな時間に、誰……?  まさか大家さんでもないだろうに、と震えていたら、インターフォンの音が止み、今度はドアをコンコン、と叩く音がした。  その音は次第に大きくなっていく。  ――い、意地でもでないんだから。  部屋の隅に縮こまって、ぎゅっと目を瞑った。音が止み、小さくガチャガチャ、と音が聞こえて――。
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