2人が本棚に入れています
本棚に追加
付き合いたてのあの頃も。
あの日はもうすっかり深夜になっていた。
吹き荒れる風。窓にぶつかる大粒の雨。遠くからは不気味な雷の音が響く。
今とは違って、まだ手元にはスマホがあったし、電気もついていた。
だけど、一人ぼっちだった。
一人暮らしの部屋はさほど広くもない。だから電気さえついていれば大丈夫だと思っていた。
だが、やはり雷が近付いてきた、と思った瞬間、電気は消えてしまった。
軽くパニックを起こして、いろんな人に電話したが、誰一人としてスマホに出ない。
ダメもとで送ったメッセージは既読もつかず……。
――正真正銘一人ぼっち。
一人絶望しながら、ただ嵐が過ぎるのを待っていた。
その時だった。
ピンポーン――ピンポーン――……。
インターフォンが鳴った。電気とインターフォンは別なのか。
そんな疑問よりも先に、なぜこんな嵐の日に、と恐怖が襲ってくる。
――こんな時間に、誰……?
まさか大家さんでもないだろうに、と震えていたら、インターフォンの音が止み、今度はドアをコンコン、と叩く音がした。
その音は次第に大きくなっていく。
――い、意地でもでないんだから。
部屋の隅に縮こまって、ぎゅっと目を瞑った。音が止み、小さくガチャガチャ、と音が聞こえて――。
最初のコメントを投稿しよう!