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子どもの頃、運動会や遠足の前日によく作った。迷信を信じていたわけでも、翌日の晴天が約束されるわけでもないのに、窓辺にぶら下がったそのマヌケな形を見ていると、おかしさで不思議と気分が晴れたものだ。
ポカンとする陽平に、「ほれ」と投げつける。
「結構効くぞ。そういうのって。病は気からっていうじゃん」
電気を消し、布団にもぐりこむ。
「おまえのは呪いなんかじゃねえよ」
「そう、かな……そうだといいな」
いつもよりしんみりとした調子の陽平が気になった。きっと本人の中で、雨が降る日だけにしか感じられない《何か》があるのだろう。母の言うように、誰もいない家に帰そうとするなんて、無神経だったのだろうか。
「なあ、陽平」
「ん?」
「おれって無神経? おまえにひどいこと言ってたりする?」
陽平の視線の先を探しながら、祝は訊いた。まわりから言われることもしょっちゅうだが、たしかに傷を負っている陽平に無遠慮すぎるところがあるかもしれない。でも、それでも陽平は変わらず陽平だし、そんな陽平と接していると、祝も自然な自分でいられるのだ。
「ハジメは普通だよ。超絶ふつうー。そのままでいればいいんだよ。ていうか、いて」
なんだか体よくあしらわれたような気がしないでもないが、ちょうど眠気もやってきた頃だったし、祝は「ならいいや」と言って布団をかぶり直した。
眠気の狭間で、ふと陽平の声がする。
――おれ、前に好きな子いたんだ。
何か返さなきゃ、と思う。でも、眠くて夢か現実かわからなくなってくる。結局眠気には勝てず、祝はそのまま深い夜と海の中へ、身を任せることにしたのだった。
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