物語第三夜 ~桃太郎~その壱

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 むかし、むかしある所に、お爺さんとお婆さんがいました。お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。  お婆さんが川で洗濯をしていると大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこ、と流れて来ました。お婆さんはその大きな桃を背中に担いで家に持って帰りました。その桃を切ると中から赤ん坊が出て来ました。  お爺さんとお婆さんは桃から生まれた赤ん坊に桃太郎と名付けました。    桃太郎はすくすく立派に成長しました。  僕はいぬ、名前は設定されていない。  ある理由で桃太郎って言う人と、鬼ヶ島へ鬼をやっつけに行くことになった。  ある理由?それはもちろんきび団子!  最初、きび団子あげるから鬼退治に一緒に行かない?って言われた時は、いきなりこの人何言ってるのかなって、ちょっと頭おかしいのかなって思ったんだけど、お腹空いてたし、きび団子っていうくらいだからきっと食べ物なんだろうなって思って、とりあえず一緒に行くって言ってきび団子もらったんだよね。だってここ何日かお水しか飲んでなくて、何故って?それは僕が狩りが下手くそだから。  いつもはパパとママが皆の食べる物を獲って来てくれてたんだけど、そのパパとママが熊に食べられちゃって、一緒にいた兄弟や親戚、友達も知らないうちに1匹ずつ居なくなっていったんだよね、何処に行ったんだろう?  という訳で、いつも食べるものを用意してもらっていた僕が狩りなんて出来るはずもなく、何とかお水で空腹を満たしていたって訳。そしたら何とびっくり、食べ物くれる人が突然現れた上に、このきび団子って言う食べ物、今まで食べたもののどんなものよりも美味しくて、僕もうすっかりきび団子の虜になっちゃった。桃太郎さん一生ついて行きますね。  2人で鬼ヶ島へ向かっている途中、キジさんが飛んできて桃太郎さんと何か話していた、そしてそのまま一緒に行くことになった。キジさんも、きび団子の虜になっちゃったのかな。でも僕の分もちゃんと残しておいてね。  私はキジ、名前は設定されていない。  桃太郎とは昔からの付き合いで、桃の時から知っている。何故って?それは桃太郎が来る前から私はお爺さんとお婆さんの家で一緒に暮らして居たから。お爺さんとお婆さんは絵に描いた様な良い人で、猟師の罠にはまって動けなくなっていた私を助けてくれた上に、これからもずっと一緒に暮らそうなんて言ってくれた。ほんと神様っているんだね。って思った。  と言う訳で、決してきび団子が欲しくて近寄ってきたわけではない。何時でも家で食べられるし。  では何故、桃太郎のところに飛んできたのかというと、もちろん鬼ヶ島へ一緒に鬼を退治しに行く為。ではなく、まあ行くけど、でも今は鬼退治に行くのに、もう1匹誘う予定の猿が何処に居るのか探していたんだけど、なかなか見つからなくてとりあえず1回戻って来たところ。 「いつものところには居なかったよ。」 「他に居そうなところ回ったけど居なかったね。」 「そっかぁ、困ったなぁ。」 「もしかしたら、カニさんが植えた柿の木の辺りは?」 「あ〜カニさんのところかぁ、そっちはまだ行ってないからちょっと見に行ってくるね。」  今回の計画は猿がいないとどうしても成り立たない。どうにかして探さないと。   はぁ、、、。またやってる。この前もカニさんが登れないのをいいことに頑張って育てた柿の木の柿を独り占めした挙げ句、渋柿をカニさんに投げつけて大怪我させていたのに、、、。  しかもそのカニさんは重体でまだ意識が戻っていない、あんな酷いことしておいてまた同じ事してるなんて。  あいつほんと最悪。  俺様は猿、名前は設定されていない。  良い気分で柿を食べているところに、桃太郎の使いのキジが来た。何やら鬼ヶ島へ鬼退治に行くらしい、しかも俺様に一緒に行って欲しいなんてほざいている。  アホか?何でわざわざそんな危険なところに行かなきゃ何ねーんだよ。 「ねぇ、私たちと一緒に鬼退治に行ってよ。」 「はぁ?やだよ、何が楽しくて鬼退治なんか行かなきゃいけねーんだよ。俺様に何のメリットもねーじゃねーか。」  ほんとむかつく。 「そう言えば、桃太郎が言ってたんどけど、鬼はきっと金銀財宝を沢山溜め込んでいるだろうから、もし退治する事が出来たらその溜め込んでいる財宝を持っていっても良いって言ってたよ。」 「行きます!はい、行きます!ぜひお供させて下さい!いやぁ、さすが桃太郎さん、昔から出来る男だと思ってたんですよ。」    俺は桃太郎、もちろんこの話の主人公。  お爺さんとお婆さんの為に、鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだけど実はそれだけじゃないんだよね、他に何がって?それはまあ、おいおいね。  何はともあれ仲間が揃った、いぬはとりあえず人数合わせ、最初は不審者を見るような目つきでこっちを見てたけど、きび団子あげたら目の色変えて、すげー尻尾降ってた。何かお腹空かせてたみたいで、めちゃくちゃ喜んでた、一生ついて行きます!なんて言ってたもんな。ただのきび団子であれだけ喜んでるところみると、相当食べる物に困ってたんだろうな、おかげで難なく仲間に出来たもんな。この計画が終わったら家に置いてやるか。  キジとはこの計画を一緒に立てた、もちろん全てを知ってるし1番の理解者であり相棒でもある。  猿は、というと。あいつは性格が悪い上に、極悪非道、もちろん自分以外に興味が無い。ただ、強い。  実力的には俺とほぼ同じ、鬼退治へ行くにはどうしても猿の力が必要になる。  という訳で、理由はどうであれ仲間も揃った事だし。  いざ、鬼ヶ島へ。
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