物語第三夜 ~桃太郎~その弐

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 いぬがうるさい。  きび団子きび団子って、もう何個あげたと思ってんだよ。俺たちの分も入ってんだよ、数には限りがあるの。キジや猿は要らないって言ってるけど、これじゃあ鬼ヶ島までもたないだろうが。ちょっとは遠慮しろっつーの。  キジは先に行って、鬼ヶ島へ渡る為の船を探している。俺たちが着く頃には船の用意も出来ている事だろう。ほんとあいつは何にでも気がきいて頼もしい。  猿は完全に我関せずでいる。一応ちゃんとついて来ているところを見ると、よっぽど鬼が持っている財宝が魅力的だったんだろう。まだあるかどうかも分からないのにね。  いぬをパシリに使ってる上に、上にまたがってカニさんの柿の木から取って来た柿を優雅に食べてる。相変わらず性格が悪い。  船頭さんが言うには、鬼ヶ島の近くまでは連れて行けるがあまり近づき過ぎると鬼に見つかってしまうので、最後は泳いで行ってくれという。猿は猛反対していたが、財宝の話をすると渋々泳いで行く事に了承してくれた。  鬼ヶ島へ着くと、辺りには殆ど鬼は居なく、数匹の鬼をやっつけて状況を聞いてみると、どうやら島の1番上で宴をしているらしい。鬼を一網打尽に出来る良い機会だと思った俺は、やっつけた鬼たちを縛り付け一気に1番上へ駆け上がって行った。  俺たちの奇襲は大成功し、酒に酔って油断していた鬼たちを瞬く間にやっつけていった。鬼たちは、もう悪さをしないと約束し、隠していた金銀財宝を差し出してきた。そして俺たちの鬼退治は幕を閉じた。  これから本当の計画が始まる。  鬼を退治した俺たちは、約束通り全ての金銀財宝を猿にあげ、そのかわりに俺たちは鬼が溜め込んでいた食料を貰って島を出た。  家に着いた俺たちは、お爺さんとお婆さんに鬼を退治した事を報告し、ついでに仲間になったいぬを、この家で面倒を見たいと頼んだ、もちろんお爺さんとお婆さんは心良くOKしてくれた。これで、晴れていぬも家族の一員になった。  これからは好きなだけきび団子が食べられて、いぬも大満足だろう。  それから1週間が過ぎ、とうとう計画を実行する時が来た。  キジがいぬの散歩から戻って来ると。 「そろそろだね。」 「ああ、では行こうか。」 「お前はお爺さん、お婆さんと待っているんだよ。」  何も知らないいぬにそう告げると、きび団子をあげ、俺はキジと共に出て行った。  相変わらず美味しそうにきび団子を食べていたいぬを思い出すと、あとでいぬにもこの計画の全容を教えてあげようと思えた。そして今度、また計画を実行する時はいぬも連れて行ってあげようと思った。  家を後にし、俺たちは目的の場所へ向かった。 「まさかこんなに金銀財宝が手に入るとはな、カニが育てた柿を食べるのももう飽き飽きしてたんだよな。」 「これでもう柿ともおさらば、毎日好きな物好きなだけ食べて、一生遊んでくらせるな。」 「・・・?」 「え?おい、おいおい!何だこれ!そんな嘘だろ、、、。」 「まさか、、、メッキ。」 「何てこった、ドロ細工にメッキを塗っただけだったなんて。騙された。」 「・・・?」 「うっ。何だ身体が痺れる。」 「やっと気付いたか。」 「あっ?、、、桃太郎?何で?」 「もしかして、お前の仕業か!」 「ああ、全てはお前を騙す為のお芝居だったのさ。」 「お芝居?なぜ?何で俺様を騙す必要がある。鬼退治にだって一緒に行ってやっただろう。」 「あれもお前を騙す為の芝居だよ。苦労したよ、先に鬼ヶ島へ行って鬼を説得し、皆でドロ細工にメッキを塗って金銀財宝の偽物を作り出したのさ。最後は鬼もノリノリで色々やってたよ。」 「そんな、鬼まで、、、。」 「実際、お前も連れて鬼ヶ島へ行った時は皆吹き出しそうになるのを必死で我慢してたよ。鬼の演技も中々だったろ。」 「だから俺様が何したって言うんだよ。」 「それはな、頼まれたからだよ。」 「頼まれた?誰に?」 「カニさんだよ。」 「カニ?」 「そう、お前が渋柿を投げつけて大怪我させたカニさんの子供にだよ!」 「は?」 「カニさんの善意を踏みにじった挙げ句、騙して柿を独り占めするなんて、お前に渋柿を投げられて意識が無かったカニさんは、今日息を引き取ったよ。」 「そんな事で。」 「良い奴だったのに、お前のせいでもうカニさんは戻ってこない、それにお前は柿を食べ尽くしたら、違う柿の木にまで手を出しやがって。」 「カニさんのカタキだ死ね!」 「ちくしょょょょょ!!!」 「グサッ、グサッ、グサッ、グサッ。」 「ゲフッ。」 「カニさん、カタキはうったからね。」 「よし、依頼完了。帰って社長に報告しよう。」 「そうだね、新しい社員も入ったし、副社長も喜んでたね。」  ガチャッ。 「ただいま!」 「おかえり桃太郎、さあ次の依頼が入ってるよ。」 「バタン」  どんな依頼もお受けします。    桃太郎探偵事務所
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