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円照寺
大いなる自己によりて自己を向上させよ
自己を落胆させてはならない
なぜなら大いなる自己こそは自己の唯一の友であり
自己こそは大いなる自己の唯一の敵なのだから
「バガヴァッド・ギータ」第6章5節
見渡す限りかなり太い大木が生い茂る深い森をゆく。
もう陽があるというのにかなり暗く感じるほどだ。あたりには民家もない。
車が1台かろうじて通れるほどの細い山道をどこまでも登っていく。
と、右手に石段が見えてきた。
バーンは車をその前に止めると、ドアを開けた。
階段の左手にある御影石でできた柱に寺の名前が記してあった。「円照寺」と。
続いて臣人も車のドアを開け、降り立った。
「結婚しての実家帰りと違うでぇ。やっぱやめて、テルミヌスに戻って一杯やらへんか?」
と、まだブツブツ文句を言っている。
バーンはそんな彼を一瞥すると階段を上り始めた。車を止めた下から見上げるとかなりの段数だ。100段、いや200段はあろうか。
(どう考えてもわいより、あいつの方が跡取りには最適やなあ。しかし、珍しいな。あいつ、自分からじじいに会いに行くなんて)
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