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(ま、日本に来てからずっと住みついてた場所やさかい。なつかしいったらええのか)
はあ〜とため息をついて、臣人も小さく見えるバーンの後を追いかけた。
30段くらい先をいく彼に追いつこうと必死になって階段をのぼっていった。
幼い頃から登り慣れた石段とはいえ、2~3段抜かしでしかもスピードを上げていくと、太股の筋肉が引きつったようにパンパンになってくる。
おまけに腰まで痛くなってきた。
頑張った甲斐あって、ほぼ同時くらいに最後の階段に到達した。
「おまえ、早すぎやでっ!!」
が、何事もなかったかのような冷静な表情のバーンとは対照的に臣人は息がもうすっかりあがっていた。
「…………」
バーンはそんな臣人をちらりと見ると視線を移した。
外界の余計な騒音は何も聞こえない。
車の音も、人のざわめきも、何も聞こえない。
聞こえるのは梢を揺らす風の音。
さやさやとまわりを囲む葉擦れの音。
自然の織りなすささやかな音だけが耳に届いていた。
懐かしそうにこの澄んだ空気を吸い込んだ。
夏だというのに、凛と冷え切った涼しい空気が緑のにおいと一緒に肺に入ってきた。
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