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「でも、帰る場所があるって思うとね
ある日ふとぽかぽかするの。
一緒に美味しいお米食べたいなって。その気持ちだけで海だって越えられる気になるの。
私はその気持ちが強すぎて、あと幼すぎて、うっかり死んじゃったけど
そういうものを大切にしたら
ユメノなら、もう大人だし大丈夫!」
その指を掴もうとすると、スッと紫の粉となって、蜃気楼は透明になっていった。するとマコトはセーラー服を翻して、愉快そうにスキップして窓の際へと跳び移った。
「それに暗闇だからこそ愉しいことあるよ。幻影城がそうだった……!」
「待って、」
「大丈夫。いつも見てる。───うつし世はゆめ、夜のゆめこそまこと。いつでもこの暗闇に戻っておいで。」
そして窓から落下するマコトを、紫の景色が飲み込んで消えていった。
最期に見えた彼女の横顔は、微笑んでいた。
目が覚めると朝の日差しが差し込んでいた。
麻のハンカチを握りしめて、私は眠ってしまっていたのだ。
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