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「……それは、大事にするはずやな……。」
無意識だったのだろうか。
しばらくして飯を頬張り始めるときの優しい目。上品に平らげる箸の使い方。
この人の価値観が好きだと思った。
そして、私がこの麻のハンカチを持ち歩いていたことも無意識だった。
彼はご飯を平らげてから、ふいに荷物に手を伸ばし、そして純白の箱を取り出して開けてみせた。
「本物の真珠を贈りたかったんや。どうせならお膝元の、な。」
真珠島で売られている高級な真珠のネックレスだった。十何万ほどしたはずだ。倹約、倹約。と遠くから眺めているだけだった幼少期の私を思わず想ってしまった。
「ユメノさん。改めて僕と結婚してください。僕についてきてください。」
真剣な眼差しを送る、私の旦那様になる彼。
「……ありがとう。」
なぜか、ハイ。とは、そのときの私は素直に頷けなかった。
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