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わたしの考え方が、兄や姉、内訳をいうなら兄、姉それぞれ2頭づつのはらからとは、まったく違うということ、それをけもの独自の勘でさとった両親は、それなりに悩んだらしい。
この子は野山では育たない、と思ったのだろう。
狩りへの意欲はないばかりか、ぼおっと周りの景色を見ているばかりで、兄姉たちから離れひとり遊びをしていた末の子狐は
毛色は白っぽく目立ち獲物に見つけられやすいし、動きに俊敏さが欠けていた。
ある日2頭の親狐は、ついてこい、というように身振りで示し、歩き出した。
それがわたしの孤独の旅の始まりであった。
そして、自分の生き方を変える人たちとの出会いの始まりであった。
わたしと両親は半日かかって小走りに進んだ。
けものは縄張りがある。わたし達は一家の縄張りから出て、異なるにおいのある他の狐の縄張りを通り抜けていくのだが、進んだその道は「特別」の道のようであった。
そこはつまり道なのだ。四方八方から伸びてきた小道はその道に合流し、あるひとつの場所に向かっているようだった。
わたしはその道を歩いているときに、懐かしい感じと、泣きたくなるような気になった。その時は子どもで、なんだか甘酸っぱいな、と思っていたが。
そして道には半里ごとに狐火が灯された道標があった。
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