不登校でも素晴らしい事は有る

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 それからも僕は普通に過ごせなくて、休んだり、通って見たりして日にちが過ぎる。  学校に行きたいのに学校に居る時間はとても苦痛だった。呼吸も出来ない空間に閉じ込められて気分まで悪くなり、給食も食べられなくて、昼休みに廊下の隅っこにただ立って普通のみんなを眺めていた。僕はとてもひどい顔をしているのだろうか、隣のクラスの先生が僕に声を掛けてくれた。  その先生は僕のクラスの国語の授業を担当しているので、当然僕の状況も知っている。だから心配してくれているのだろうか。それは解らないけど、僕は先生と言うものに恐怖にも似た印象を描いていて反論なんて出来ない。 「保健室に行く?」  そこまで僕は気分が悪かったのだろうか。どうしようかと思っていたら国語の先生は僕の腕を引っ張った。ちょっと格好悪い。けれど悪い気分では無かった。引っ張ってくれているこの先生は優しさで僕の事を引っ張ってくれているのが解った。  そして保健室に着いてその先生は保健の先生に声を掛ける。すると保健の先生は僕と会った事が無かったのににっこりと笑ってくれた。それは今まで見たどんな先生とも違っていた。 「教室が辛かったらいつでもこっちにおいで」  とても優しい言葉だったけれど、それが逃げの様であまり乗り気にはならなかった。僕はあくまで普通で居たかったのだから。こんな所に居るのは普通じゃない。僕だけを特別扱いしないでくれ。  優しさに包まれながらも僕はそれを受け入れない様にしていた。  二人の先生は保健室に僕を進めるのかと思いきやそっちでは無くて、保健室の向かいにある相談室と書かれている部屋に案内をした。そこのドアを開くと中には三人の生徒が座って居た。 「みんな同い年だよ」  保健の先生が僕に説明をしてくれて、その時国語の先生は楽しそうにその人達とお喋りを始めていた。その誰もが普通に思えたから、きっと僕とは違うのだろう。  僕はその部屋に置かれて時間を過ごしたけれど、家や教室に居るよりもずっと楽な時間を過ごせた。本を読んでいる子とお話好きな子そして勉強をしている子のそんな三人が居て、僕は取り敢えず様子を伺っていたけれど、気付いた時にはもう三人と仲良くなっていた。それからその部屋での時間を過ごすとそこに居た人たちは僕は仲間だと思うようになった。  十年が過ぎた今日はあの頃の仲間と久し振りに会う約束になっている。僕は彼らと一部の先生のおかげで今は生きている。これは冗談ではない。本当に僕はそう思っているんだ。  確かにあれから高校に進んでもまだ不登校は続いてやっとで卒業して大した会社にも就職は出来ないで、安月給で働いているけれど、それでも僕は今も生きている。そして嬉しい事も有った。  仲間との約束の店を訪れると昔と全く変わらないみんなが居て、そしてそのひとり、一番眩しい笑顔の彼女は今はもう僕の最愛の妻に。 おわり
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加