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謀③
人形とのリンクを頼りにレインの元へと急いだ。置手紙などなくても人形がありさえすれば場所は分かるのだ。
たどり着いてみるとレインは縛られて転がされており、それを認めた途端目の前が真っ赤に染まった。
「ま…、魔王さま!おひとりでのこのこお出ましとは随分と余裕でございますね!我々1000人にお一人で対抗できるとでも?ほらあそこにもあちらにも潜んでおります!それにこちらには破邪の剣もあるというのに、騙されたとも気づかずに随分とお間抜けな事です!」
レインだった。レインの声に暴走しそうになるのを冷静にならねばとゆっくりと瞬きをし気持ちを切り替える。
縛り上げられているのに必死に声を張って、来てしまったのならと情報だけでも教えようとしてくれたのだろう。
周りにいた男たちはぎょっとした顔をしてレインを見ている。
レインが裏切るとは思っていなかったのかやつらの間に動揺が広がる。
しかし、1000人か。そんな少人数で私を討とうとは随分と舐められたものだ。
ふんと鼻で笑って見せる。
何人いようと関係ない。私が用があるのはレインなのだから。
お前の服の胸の辺りの不自然な膨らみを見て、僅かに残っていた不安も消え確信に変わった。
お前の愛はこんなに分かりやすいのに、私はバカだな。
どういった経緯でこの男たちと仲間になったのか分からない。
どうして私を討とうと思っていたのかも。
だがそんな事は些細な事だ。
お前が私の事を愛しているという事が重要で、それ以外はどうでもいいのだ。
お前の口から詳細を訊くつもりだったがそれももうどうでもいい。
私はただ一人レインの事だけを見つめまっすぐ歩いて行く。
途中蚊が止まったようだが払いのけ始末した。
遠くから放たれた花火も腕を一振りで消えてなくなった。
レインの元に辿り着いた時には、その場には私とレインの二人だけが残った。
私は何も言わずレインを縛っている縄を取り去る。
「―――魔王…さま……どうか…どうか…僕も…殺してください」
「何故?」
「僕はあいつらの仲間なんです!魔王さまをころ――――っ!」
私はレインの口を自らの唇で塞いだ。
暴れ抵抗するレイン。
だけど離してなどやらない。
ぎゅっと抱きしめ唇を存分に貪る。
「ふっ…あぅ……っ」
長く濃厚なキスにレインがぐったりした頃やっと唇を離しレインを解放する。
「レイン、私はお前を愛している。お前がたとえどんな者であったとしても私はお前を愛している。伴侶はお前以外考えられぬ。お前が死んでしまうと私は生涯ひとりぼっちだ。私を少しでも哀れだと思ってくれるのなら…私の愛を受け入れてはくれぬだろうか?」
「―――僕は…っ」
「レインは真面目過ぎるのだ。もう少し楽に生きてみてもいいのだぞ?―――もし、それでもお前が気になると言うのなら我が伴侶として私の為に…国の為に頑張ってみるというのはどうだろう。―――これ以上は私も譲歩してやる事はできぬ」
へにょりと眉尻を下げ困ったように笑って見せる。
レインはそんな私を見て大粒の涙を零した。
「――――はい…っ。魔王、さまっ。レインは…生涯あなたさまと共にあなたさまの為、あなたさまと国の為に命を捧げる所存です…」
「――命まではよい。やっと想いが通じたと言うのにそう簡単に死んでくれるなよ?」
「――そう、ですね。ふふ」
その笑顔はあの時偶然見た心からの笑顔だった。
私が心奪われた笑顔。なんて可愛く愛おしい。
レイン、私の全て。この先お前が何を考えどう行動しようとも私だけはお前の事を信じる。たとえこの身を滅ぼされようとも、お前の事を愛し続ける。
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