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にやにやと笑いながら言うのは、こーちゃん先輩だ。
「僕らサッカー部に念願の女子マネが来た!って思って去年みんな喜んだのも束の間!入って来たのはほとんど男子みたいな空気の空手ムスメだっただろ?そりゃあもうみんながっかりしたわけだよ。特にお嬢様マネージャー萌えの先生と、ポニテ萌えの部員と、大和撫子萌えの部員が。全然恋愛関係期待できそうなタイプじゃない、バリバリの運動部系で武闘派系でボーイッシュ系じゃん陽菜ちゃん」
「そんなの知るかいな!先輩達の好みがどうかなんて私に関係ないんで!」
ってお嬢様マネージャーに萌えてんのは先生かい!私は心の中で盛大にツッコミを入れた。そんなのギャルゲーと男の妄想とラブコメマンガの世界にしかいねぇよといいたい。
「幼馴染ポジは既に綺斗さんが持ってちゃってますけど、綺斗さんと付き合ってる感じでもないですし、なんか恋愛興味なさそうな顔してますもんね陽菜先輩」
うんうん、と頷くのはまるくん。見た目だけなら小学生でも通るほど可愛い少年だが、言うことやることはことごとく可愛くないのが彼である。別名、悪戯の天才。いくらサッカーやりたいからって、サッカー部の部室の窓を埋め尽くさんばかりのてるてるぼーずを作ったりするのはいかがなものなのか。先月のアレは軽くホラーだった。しかもそれでびびって悲鳴を上げた私をスマホのカメラで連射して笑ってたのがこいつである。今度絶対仕返しをしてやると心に決めていたりする。
「興味ないわけじゃないっての」
つんつん、とそのまるくんの額をつっついて言う私。
「ただね諸君。私はこのサッカー部のマネージャーとしてとっても忙しいわけ。誰がこのクソ汚い部室を掃除して、備品管理して、みんなのメニューの管理もして監督とコーチの愚痴に付き合ってということをしていると思ってるんだね?あとこの間のてるてるぼうずの恨みは忘れてないからな。あれ片づけたのも誰だと思ってんだよ」
「すみませーん(*´∀`*)」
「その顔は全く反省してないなこのくそガキめ!」
「あでっ」
あまりに素晴らしいニコニコ顔が忌々しい。デコピンをかましてやると、まるくんはその反動で思いっきり椅子から転げ落ちた。ふふん、元空手クラブ主将のテコピンなめんじゃないぞ、と。はっきり言ってまだまだひよわな中学生男子より、よっぽど腕力も体力もある自信があるのだ。向こうはサッカー部なので、脚力は負けるかもしれないが。
「まあ、恋愛対象になる存在が周りにいないと無理ですよね」
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