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「何で・・・私は・・・お母さんにあんな事を言ったんだろ・・・」
お母さんグマがハンターに殺された人里からやっと離れて、山奥の獣道で止めどなく涙を流して項垂れて子グマのポワはトボトボと歩いた。
子グマのポワは、あの日の母グマとの他愛ない会話を何度も思い出しては自責した。
・・・・・・
・・・・・・
「お母さん!!」
「なあに?ポワ。」
ある日、子グマのポワはお母さんグマに聞いてみた。
「私、あの人間の街に行ってみたいの。」
お母さんグマは困惑した。
「ポワ、ちょっと待って!人間の街に行ったら私達どうなるか解ってるの?!」
「うーーーん・・・行きたい行きたい行きたい行きたのーーーっ!!」
子グマのポワは、駄々をこねた。
「困ったねぇ。何で人間の街に行きたいの?ポワ?」
「人間の街にはねぇ!!素敵なキラキラしたものや、うーんと美味しいものがあるの!!」
お母さんグマは、山に来た人間のハイカー達が捨てていったゴミ溜めで食べた菓子や肉といった食べ残しの生ゴミの味を思い出した。
・・・今年は、山にドングリや木の実の実りが少なくて私達はお腹を空かしてる毎日・・・
・・・そうだわ・・・
・・・ポワの言う通り、人間の街にいけば何か食べ物にありつけるかも・・・
・・・もし人間に見つかったら大変だけど、見つからないようにすれば・・・
お母さんグマは、ソワソワしている子グマのポワを見詰めてニッコリと微笑んだ。
「行きましょ!街に!ポワ・・・!!
でも、これだけは約束よ。
人間には近寄らないでね。解った?」
「はーーい!!」
・・・・・・
・・・・・・
「私がお母さんに、こんな我が儘言ったばかりに・・・
お母さんの言う通りに、人間には近寄らなかったわ・・・お母さんもそうしたわ・・・
人間はクマが嫌いなのは、私も解ってたけど・・・
私のせいよ・・・私がお母さんを殺したのだわ・・・
あんな危ない事と知りながら・・・なんて事をしてしまったのよ・・・」
お母さんグマを失った子グマのポワの足取りは重く、心がひもじかった。
「これから、私ひとりで生きていくんだわ・・・
どんな罰でも、私は受け入れるわ・・・
お母さん・・・ごめんね・・・お母さん・・・」
自責の止まらぬ涙で顔をグシャグシャになったみなしごの子グマのポワは、孤独に耐えながら山奥へ山奥へと分け行った。
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