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どのくらい、みなしご子グマのポワは山奥へ歩いていったのだろうか?
子グマのポワは、好物の木の実やドングリは、全部お母さんグマに任せっきりだったツケがここに来て明るみになった。
「お腹空いた・・・お腹空いた・・・お母さん・・・お母さん・・・そうね、お母さんもう居ないんだね・・・」
ぐるるるる・・・きゅるるるる・・・
子グマのポワは、慢性的な空腹の飢えに必死に耐えながら更に歩みを止めなかった。
ぐるるるる・・・きゅるるるる・・・
「もう駄目だわ・・・もう歩けない・・・」
子グマのポワは、突然ここでドサッ!!と倒れた。
「はあ・・・はあ・・・」
うつ伏せに倒れこんだ子グマのポワは、息を絶え絶えに眼下に拡がる麓の街並みを虚ろな目で見詰めていた。
「やっぱり、人間の街に行こうかしら・・・お母さんが殺されたけど・・・
あそこへ行かないと、食べ物にありつけないし・・・生きていくにはそれしかないし・・・はっ!!」
その時、子グマのポワの脳裏には、ハンターの放った銃弾に倒れて、「ポワ!!お逃げなさい!!貴方も撃たれるわよ!!」と叫んだお母さんグマの必死な姿が思い浮かんだ。
「お母さん・・・貴方の死は無駄にやっぱり出来ないわ・・・お母さんは私の為に死んだんだしねぇ・・・」
子グマのポワはそう思うと、うっすらと目から涙が零れた。
・・・・・
どのくらい時間が経ったのだろうか?
ペロッ。
「んんん?ひゃっ!!」
そのまま寝てしまった子グマのポワの涙で濡れた目を舌で舐めている感触に、慌てて飛び起きた。
「良かったぁ!!死んだのかと思った!!」
そこには、目がクリクリした雄の子グマが鼻をヒクヒクさせて、子グマのポワの目の前にキョトンと座り込んでいた。
「だ、誰?!」
「君もみなしご?」「うん。」
「俺もみなしごだ。俺の名前は、『パク』って言うんだ。宜しくな!みなしご同士!!」
「わ、私は『ポワ』。お母さんを人間に撃たれたの。」
「俺もそうだ。俺もハンターに母ちゃんを殺されたんだ。」
この年は、この山では木の実が不作でよくクマが人里に降りてくる被害が特に多かった。
その為に地元ハンターに人里に出没してきたクマが悉く射殺された。
この雄の子グマのも、雌子グマのポワ同様に母グマをハンターに射殺されたみなしごだった。
「君、ひとり?」「うん。そうだけど?」
「俺、とても寂しいんだ。ねぇ、ポワとやら。俺と付き合わないか?」
「えっ・・・!?」
これが、ポワとパクとの運命的な出逢いになった。
・・・・・・
ポワとパクは、お互い一緒に歩き、
数少ない木の実を探して食べ、
お互い付き合っているうちに、段々お互い恋が芽生え、
そしてお互い結ばれ、
やがて月日が流れ・・・
・・・・・・
「おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!おぎゃあ!」
冬籠もりの巣穴の中、ポワは可愛い赤ん坊グマを産んだ。
成獣になった雌グマのポワは、お母さんグマになった。
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