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大聖堂
聖堂に一歩足を踏み入れると、新入生たちはあまりの荘厳さに圧倒されてしまった。外から見て想像するよりも、中はずっと明るい。ステンドグラスが外の光を取り入れ、聖堂内部を虹色に染め上げている。まるで、大理石の森の中に迷い込んだかのように生き生きとした柱や壁面の構造が、敬虔さと勘当を思い起こさせた。二階席には、セイレーンの聖歌隊と楽団がおり、厳粛な音楽を奏でている。一歩を踏み出すごとに上級生や教員の視線が集まる。一年生たちは千年の学園の歴史と伝統をこの瞬間から肌で感じることになる。ロイド校長が一週間前から練ってきた祝辞を小脇に抱え、魔法を使わずに威厳のある態度を醸し出している。ざっと三百人ほどの新入生が今日の日のために飾り立てられた、大広間に整列した。七年生までの在校生と全教員、聖ギルデオンに在籍する全ての魔導士が集結したことになる。中央には、校長専用の演説台が据え付けられている。両側に並んだ教師陣の中から、ピンと背筋を伸ばしたネモフィラ教頭が一歩足を前に進めると、巻物の羊皮紙を取り出すと、勿体つけて、顔の前に広げた。
「それでは、第一五三二回聖ギルデオン校入学式典を開式いたします。まず、本学校長にして、世界で最も偉大なる魔導士のお一人、ロイド・マクダウェル氏よりお言葉を賜ります。」
やれやれ、ネモフィラのやつときたら、かしこまりおって。校長は、ゆっくりと中央の説教壇へと進んだ。記憶の魔法をちょっとだけ使って、スピーチの言葉を思い出す。あまり日常生活のことを魔法に頼り過ぎるのはうんぬん好きではないが、スピーチを一字一句暗記するのは、さすがに魔法の助けがないと無理だ。
「えー、今日の良き日に。未来に溢れる若き諸君がこの伝統と格式ある聖ギルデオン校に入学されたことは実に喜ばしいことであり・・・」
云々かんぬん。チラチラと生徒席の方を見ると、さすがに新入生は初々しく真面目に話を聞いているようだ。これが三年生にもなると、あくびしながら、隣同士の男子生徒で小突きあいながら話す輩が多くなってくる。案の定、在校生の席を見ると、半分ほどがまともには聞いていないようだ。いかんいかん、スピーチに集中しようと校長は気を取り直した。
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