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「それで、ニキアスのオーラが魅惑の魔法の力を持ってるってことなの?」
と晴太が尋ねる。
「そうよ。すごく強力な黄金色のオーラだわ。私が今まで見た中では一番強いオーラだと思う。眩しくて直視できないくらいよ。」
「そんなにすごい魔導士だったんだ。」
晴太は入学早々、格の違いを見せつけられた気分だった。黄金色だなんて、そんな特別な色のオーラを自分が持ってるわけは無いし、ヴィオラの反応を見ても、そんなに大したオーラでは無いんだろう。自分は召喚魔法が一番得意だから、その魔法に最も合ったオーラを持っているのだろうか。魅惑の魔法のオーラが黄金色というのはなんとなく理解できたが、召喚魔法が何色なのか晴太には見当もつかなかった。自分にはオーラが見えない上に、どんなものなのかさえ知らなかった。心の中ではすごく恥ずかしかった。パンカジュやオマールは気にしていなさそうなのに、なぜだか知らなかった自分をついつい責めてしまった。
「へえ君、良く知ってるんだね。」
ニキアスが笑顔を向けると、パンカジュはさっと手で目を覆った。一方、晴太はニキアスこそこの人生で巡り合うべき最良の相手なのではないかと思い始めていた。
「僕は、情報と記憶の魔法が得意だからね。それより、君の魔法はなんとかした方がいい。ほら、見てみろよ。晴太君に何をしたか。今にも天に昇っていきそうな目つきをしてるじゃないか。おせっかいかもしれないけど、そのままだと学園生活に支障をきたすことになると思うよ。」
「私に任せてみて。多分、オーラを制御することって難しいんだわ。」
とヴィオラ。
「そうよ、恋の魔法とも言うんだけど、これは一度かかるとなかなか解けないの。一生魔法にかけられる人もいるぐらいよ。それに、他人がうっかり手を出していい魔法でもないからね。対抗できるのは、唯一時間だけよ。それでも完全に破られるかどうかは分からなくて、忘れたころにまた魔法がくすぶり始めたりするんだけどね。私にできるのはせめて効果を和らげることだけ。」
「なるべく、早く和らげてもらえれば助かるな。」
晴太はおずおずと頼んだ。早く魅惑の魔法を解いてもらわないと時間に頼らなければならなくなるような気がする。
「晴太君、私の目を見てね。」
「うん、分かったよ。」
普段なら、女の子の目を見るなんてドキドキすることのはずなのに、何も感じなかった。まだニキアスの魅惑の魔法にかかったままだからかもしれない。それどころか、ニキアスから視線を逸らすのがもったいないという気持ちにさえなった。ヴィオラは目を合わせると、晴太の瞳の奥を覗き込んだ。そして、ゆっくりと瞳の奥のこんがらがった魔法をたぐり寄せると、魔法を揺さぶったり、交差させてみたりして、なんとか少しだけ緩めることができた。ヴィオラの言う通り、恋の魔法は他人にはなかなか解けない魔法なんだ。
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