食堂で

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-バタン。 晴太の背中が誰かに押され、思わずつんのめり、転んでしまった。 「おう、わりいな。一年。」 晴太がきっと後ろを振り向くと、トロールのように大きな体をして、上級生が晴太のことをバカにするような目つきで見降ろしていた。 「なんだ、ワノ国の坊やってのはちっこいんだなあ。あんまりちっこくて見えなかったぜ。目もほっそいし、鼻もちっこいよなあ。」  上級生は、晴太の背中をボロボロの靴で踏みつけると、グイグイと押してきた。内臓が圧迫され、晴太の背骨が悲鳴を上げた。突然のことで思考が追いつくより先に体の痛みが晴太を襲った。何が起きているのか分からなかった。 「お前みたいなのが、この学園に入るなんて初めてだろうぜ。ったく、天下の聖ギルデオン高校の東の田舎もんを入学させるようになったとはな。それに、おい見ろよ、皆。どいつもこいつも汚い肌の色しやがってよお。いつから、この格式高い学園はここまで堕ちやがったんだ!?動物園か、ここは、ああ??」 「や、やめてください。」 息も絶え絶えで晴太は、男を睨みつけたが、大男は逆に晴太の髪をがっしりと掴むと頭を揺さぶった。 「ああ!!痛いよ!」 晴太の髪の毛が何本も抜け、生理的な涙が両目に滲んだ。あまりに突然の暴力に対して、晴太は何が何だか訳が分からなかった。身体的な痛みよりも、その理不尽な状況に対する恐怖がまさっていた。屈強な体をした男の体重がずっしりと晴太の体にかかってくる。 「いっちょ前に喋ってんじゃねえ。お前は、俺らとは違う動物なんだよ。この猿が。」 そして今度は、痛みからでは無く、屈辱から晴太は涙を流した。自分を支えていたものが、ポッキリと折られそうだった。自分の国ではこんな目にあったことは無かった。勉強も運動もできて、色んな生き物を呼び出せる人気者だったのに。魔法を使おうとしても、意識を集中できなかった。モゾモゾと体を動かしてなんとか召喚の札を取り出そうとするも、がっちりと体を抑えられていて、思うように動かせない。ヴィオラとパンカジュが晴太を助け出そうとしているのが視界に入ったが、仲間たちに妨害されていた。悔しいはずなのに、反抗する気が起きなかった。
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