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ヒュン、ヒュンっとキリアンが突きや蹴りを繰り出すと、その部分だけ、デイブの黒い魔法が払われ、清浄な空気に変わっていく。しかし、デイブの魔法はじわじわとキリアンの周囲を取り囲んでいく。黒い魔法に触れるたび、キリアンの動くも徐々に鈍くなっていくようだ。いくつかの攻撃は確かに大男の体をとらえていたが、攻撃が当たれば当たるほど、キリアンの方がデイブよりも消耗して見える。現にキリアンの額にはうっすらと汗がにじみ、ハアハアと息切れもしている。反対にデイブの黒い魔法は徐々に濃くキリアンを取り囲んでいく。晴太は、黒い魔法の恐ろしさを身をもって体感していた。この黒い魔法が体をすっぽりと包んでしまうと、自尊心だけではない、自分の意志というものが完全に奪われてしまうのである。
(ああ、僕のせいで、ごめんなさい。キリアン先輩。)
薄れゆく意識の中で、晴太はキリアンが勝ってくれることを願っていた。キリアンが唯一の希望だ。だがその小さな希望もデイブのどす黒い漆黒の魔法に飲み込まれそうになっていた。
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