食堂で

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「キリアン先輩!!今です!」 ニキアスの鈴を振るような明瞭な声が木造の食堂の中で響き渡った。晴太は黒い魔法に囚われていたから気づかなかったが、デイブの魔法は煙のようないかがわしい動きを止めていた。ニキアスの声に即座に反応するように、キリアンの正拳がデイブの眉間を正確に突いた。トロールのように大きく、ごつごつした体がぐらりと後ろに倒れ、その隙をついて、ヴィオラとパンカジュが急いで晴太の近くに駆け寄る。 「ゴメンよ!来るのが遅くなった!ああ、これは多分服従の魔法だね。ヴィオラ、解けるかい?」 「モチよ、任せなって。晴太、スピーディーに行くわよ!」 二人が晴太の脇に手を入れ、体を抱き起すと、デイブから離れた場所に晴太を避難させた。ヴィオラがブツブツと呪文を唱え、オレンジ色のオーラで晴太の体を覆うと、晴太の体の上でグルグルと手を回し始めた。 「う、うーん。」 ヴィオラの魔法のおかげで、晴太はどうにか意識が徐々に戻り始めてきた。鉛のように重い頭をどうにか起こすと、オマールとニキアス、キリアンも晴太のそばに近づいてきていた。 「良かった、少しは楽になったみたいだな。晴太!ゴメンな、あんなやつに酷いことさせちまって。先輩失格だ。」 「そんな・・・キリアン先輩は僕のこと助けてくれたじゃないですか。先輩の格闘技、かっこ良かったですよ。」 キリアンの大きく、少しゴツゴツした手と晴太の手をつないでいると、気分はいくらかマシになってきた。さっきよりも楽に息ができる。
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