食堂で

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デイブが食堂のテーブルをなぎ倒しながら、入り口の方へと猪突猛進走り去って行った。他の生徒は悪態をつきながら、デイブにめちゃくちゃにされたサラダやシチューを魔法で元に戻している。パンカジュの口から、フフフと小さな笑いが漏れた。 「アハハ!!寄りによって、あんなもの呼び出すなんて!もっとおっかない怪物でも呼び出してやれば良かったのに。晴太は優しいなあ。」 「優しくなんてないよ。けらけら女の生首に追い回されるなんて。それがトラウマになって、女性恐怖症になっちゃったワノ国の武士もいるんだ。それに僕はまだ、ドラゴンなんて、エウロペアの生き物を呼び出せないしね。やりすぎないうちに早く戻さないと。」 ヴィオラが晴太の肩にそっと手を添えて言った。 「晴太、じっとしててよ。さっきもざっと処置したけど、癒しの魔法をかけておかないと。」 「え、癒しの魔法をかけてくれてたの?ヴィオラ。どおりでなんだか君たちが来てくれた時、気分が楽になったと思ったよ。」 「ええ、でももう少ししっかりした呪文をかけるわよ。癒しの魔法が上手く効くかどうかは、時間との闘いなんだから。早ければ早いほどいいわ。特に心の傷に関しては、処置が送れると癒すのが難しくなるの。晴太、私の目を見て。」 晴太はヴィオラのオレンジのカラーコンタクトをつけたヴィオラの目を見た。オレンジ色そのものに魔力が宿っているような気がした。たった今、晴太の自尊心をもぎ取り、意志の力を奪い取った暴力の記憶がどんどん意識の砂漠の彼方に遠ざかっていった。ヴィオラがすっと目を逸らして立ち上がると、さっきまでの出来事がまるで幼少期の記憶のように遠くに感じられた。しかし、ヴィオラがすぐに晴太の方を振り向くと、少し悲しそうな顔をして言った。 「晴太、この魔法は暴力の記憶や心の傷を遠くに追いやることはできるけど、完全に消し去ることはできないの。だから、もしかしたらひょんなことで思い出してしまうかもしれないわ。もっと治癒魔法の研究が発達すればそれもできるかもしれないけど、本当に克服するには時間が必要になると思うの。」 晴太はヴィオラのつけ爪に注意しながら(つけ爪がはがれないようにというよりは、自分の手が傷つけられないように)、優しく手をとった。 「そうか、分かったよ。ありがとう。今はだいぶ良い気分だ。すごいね、こんなことができちゃうんだ。」  その見た目で癒しや治癒の魔法が得意だなんて、意外だとは一応言わないでおいた。
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