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「すまない、晴太。食堂は滅多にケンタウロスがいないから、注意すべきだった。まさか、こんな皆の目の前でやるとは思ってなかった。すぐに先生に報告するよ。」
「だ、大丈夫ですよ!!こんなの大したことは無いし。あの先輩もきっと手を出してこないでしょうし。本当にそれほどのことじゃないです。」
「晴太。あいつは、この学園の恥だよ。あんなのが許されてはいけない。お前も許しちゃダメなんだぞ。」
晴太は胸がキリキリと痛んだ。大したことはないと思っていたのではない。本当は、デイブの報復が怖かったのだ。先生たちに言ったら、もっと痛い目にあわせると言った時の、大男の残酷な声が忘れられない。また同じような目に合うぐらいなら、自分は我慢した方がいいと思っていた。その思考が晴太の心を締め付けた。
「分かりました。でも、僕が自分で報告します。一緒についてきてくれますか?」
「ああ、もちろんだよ。」
とキリアンが優しく晴太の肩を叩いた。
「さあ、ご飯を食べましょう。」
仲間たちが晴太に向ける視線が優しくて痛くて、晴太は避けるようにして、顔を背けながら、立ち上がった。そして、なんとなくヴィオラの方を向いて、他の人には聞かれないようにそっと囁いた。
「ねえ、ヴィオラ。」
「何、晴太。」
「パンカジュやオマールだったら、ちゃんと闘ったかな。」
「何言ってんのよ。晴太だって立派だったわよ。私だって、あなたを早く助けてあげられなくて、ごめんね。」
ヴィオラは、晴太の背中に手を回し、優しく抱きしめた。第一印象よりも、ずっと優しい子なんだなと晴太は思った。
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