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(うーむ、これといって危険な魔力は察知できんが。翼竜の間違いということは無いかね。)
(無礼を承知で申し上げますが校長、翼竜が間違った報告をしたことは、学校創立以来、一度もございません。)
(分かった。だが、存在が確認できん以上は緊急警報を出すわけにもいかんじゃろう。皆寝静まっておる時間じゃしな。私が校内を見回ろうか。。)
(いえ、校長。私が行ってまいります。明日の式典もありますので、どうぞお休みになられてください。)
(そうか、ううむ。君の魔法は確かに・・・。いや、あまりやりたくはないが、ゴーストたちに行ってもらおう。彼らが何も見つけられなければ、安心して良いのではないかな?)
(校長、それでは!!)
(うむ、すまんがヴィルゴを起こしてくれ。子どもたちが悪い夢を見ないようにな。)
(かしこまりました。それでは、ゴーストたちはよろしく頼みます。私はヴィルゴのところに行ってまいりますので。では、お休みなさいませ。)
(うむ。)
ネモフィラ教頭が時空トンネルを生み出す気配を感じた。このところ、ずっとネモフィラに頼りっぱなしになっている。まあ最も、いずれはこの職を辞する日がくるわけで、少しずつ他の教員を頼っていくことも悪いことではないと思っているのだが。
世界一の魔導士ロイド・クロノスは銀色のオーラをくるくると指に巻き付け、手繰り始めた。銀色の糸は空間をたゆたい、徐々に細く、そしてその数を増やし続けていった。その糸は別の世界を繋ぐもの、生けるものの世界と死せるものの世界を繋ぐ銀色の橋である。そして一瞬、目も眩むほどの閃光が走ると、無数のゴーストが校長の体から、銀色の糸の一本一本から湧きだしてきた。その瞬間から、彼らは四方八方に散らばり、目的のものを探し始めた。ロイド校長は少しゴーストたちを呼び出したことを後悔した。何かの未練でこの世にもあの世にも属することのできない幽霊たち、その一つ一つの魂に人生があり、物語を紡いできた歴史があることを考えると、いつも胸が締め付けられる。だが学校の、子どもたちの安全には代えられない。物理法則や魔導法則に捉われないゴーストたちは、こうした役目にはもってこいだ。逆にこの世界に及ぼすことができる影響もそう大きくはないので、実際に危害を加えられることは無いと言っていい。
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