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ヴィオラの適切な処置のおかげで、晴太はだいぶ気分が良くなっていた。デイブにつけられた痣や打ち身の痕は綺麗に治っている。
「骨が折れてなくて良かったわ。」
ヴィオラの治癒魔法の腕前はかなりのもののようだ。晴太の傷の部分に手をかざしただけで、みるみる完治していった。
「バレないように、痛めつけるのがあいつの手なんだよ。なんで、早く退学処分にしないのかが分からないな。」
とキリアン。まだ、怒りが収まらない様子だ。
「体の傷はすぐに治せるけど、心の傷は難しいのよね。ちょっと種類の違う治癒魔法になってくるし。晴太、悩んだり困ったりしたことがあったら、私たちに言って。」
「ありがとう。でも、みんなのおかげで大分気分が良くなりました。なんだかお腹が空いてきて。」
一部始終を目撃していた野次馬もだいぶ落ち着いてきている。晴太たちは、もう一度食事をとりに行って、テーブルを囲んだ。
「うわあ、美味しそうだなあ。初めて見るものもあるよ。」
晴太はお腹を鳴らして、テーブルに盛られた数々の料理をよだれを垂らして見ている。
「それは、コカトリスの唐揚げだな。スープは人魚島の海藻だし、クラーケンの刺身もある。」
「うげえ、そんなの食べられるの?」
「ああ、どれも他の国ではなかなか食べる機会の無い、貴重な食材だぞ。何でも、この地域の古代の人たちは狩猟・採集から農耕・牧畜へと移行する代わりに、狩りの技術を発展させていったらしいんだ。家畜にできるような適当な生き物がいなかったために、狂暴で魔力の強い魔導生物を狩るしかなかった。その伝統が今でも続いているというわけだ。」
得意げに歴史を披露するキリアンをしり目に五人たちはおそるおそるフォークやスプーンでちょんちょんと料理をつついている。
「うーん、エウロペアでは怪物を食すと知ってはいたけど、実際食べるとなると、勇気がいるよな。生きてるときの姿を想像すると、ぞっとしないけど、でも匂いは美味しそう・・・。ここは試してみるか。」
パンカジュが思い切って、パクリとコカトリスの唐揚げを口にした。
「うん!美味いぜ!!マウリアで良く食べる唐揚げよりも、ずっとジューシーだよ!」
パクパクと他の料理にも口をつけ始める。それを見て、我先にと晴太たちも伝統の魔導生物料理を味わい、舌鼓を打った。唐揚げは、噛んだ瞬間にジューシーな肉汁が口の中いっぱいに溢れてくる。それでいて身はしっかりと締まり、うま味をしっかりと閉じ込めている。何種類ものスパイスの風味も、さらに食欲を刺激する。人魚島の海藻は、肉厚で海の風味がしっかりと閉じ込められているし、クラーケンの刺身はタンパクでコリコリと歯ごたえがあってみずみずしい。
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