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一日の終わり
授業は明日の午後から早速始まる予定だ。午前はオリエンテーションがある。オリエンテーションは入学式と同じ大聖堂で行われる。この聖堂は学校の北側に位置し、中庭は聖堂の南に面した正門から出て、ちょうど学校の真ん中にある。中庭から、東にある建物が一年生の授業が行われる建物で、召喚の魔法が行われるのもここだ。すっかり意気投合した晴太・ニキアス・ヴィオラ・オマール・パンカジュは連れ立って、東棟に歩いている。ヴィオラの目くらましがかかっているとはいえ、ニキアスの美貌もあり、歩いているだけで他の生徒の注目を引いてしまう。女子生徒も男子生徒も関係なく五人を見てひそひそと噂している。
「もっと、目くらましの呪文を強くした方がいいんじゃないの?」
とパンカジュ。
「これ以上は私には無理よ。あなたたちが手伝ってくれたら、もうちょっとマシかもしれないわ。早く目くらましを覚えてちょうだい。」
ヴィオラが風船ガムを膨らましながら器用に答える。
「まあ、少なくとも群衆に押しつぶされることは無くなったわけだから、良しとしようよ。」
晴太がフォローする。心の中では蟒蛇(うわばみ)を呼び出したことで、先生の誰かから怒られるんではないかとびくびくしていた。
「いっそのこと思いっきり嫌われる魔法をかけてみたらどうだ。」
「オマール!なんてことを言うんだ、君は。良かったら、手をつないで歩くかい?」
ニキアスはそっと差し出した手をオマールはバッと振り払った。
「やめろ!気色悪い。」
うわあ、もったいない。と晴太は反射的に思った。あんなにすべすべでキレイな手ならちょっとぐらい握ればいいのに。は、いけないいけない。やはり、ずっと一緒にいると気付かない間に魔法にかかってくるのか、またニキアスをそういう風に見てしまいそういなることに気づいた。他のみんなが何とも思わないのが不思議なぐらいだと思ったが、パンカジュやヴィオラもチラチラとニキアスとオマールのやり取りを見ているが、特別な好意があるようには見えない。もしかすると、オーラというものが見えれば、少しは対処できるのだろうか。晴太はなるべく早くオーラが見えるようになろうと、思った。
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