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「ちょっと。」
どこかトゲのある声のする方へ振り向くと、なんと初日に晴太とパンカジュとひと悶着あったあの女子生徒だった。豊かな金髪をポニーテールにして、腰に手を当てて偉そうに晴太たちを見ている。
「何だよ、また喧嘩売りに来たってか。」
とパンカジュが語気を強めて、絡みに行く。
「どうしたんだ、パンカジュ。」
とオマールが横から口を出す。
「こいつ、入学式の時に俺たちを侮辱してきたんだ。ま、俺の魔法で追っ払ってやったけどな。」
「なんだと。全くこの学園のやつらは次から次へと・・・。」
女の子はヒラヒラと手を振って、オマールとパンカジュを軽くあしらった。
「あーもう、これだから男子ってめんどくさいわね。違うわよ。さっきの食堂の件を見てね。」
「あれなら、俺たちは悪くないぜ。先に手を出してきたのは、あいつだからね。」
相変わらず、とげとげしい口調でパンカジュが答える。
「だーかーらー!喧嘩売りに来たわけじゃないって、言ってるでしょ!?」
女の子は地団太を踏みながら、パンカジュに食って掛かっている。その様子にはどこか、距離を近づけよういう意図すら感じられる。少なくとも晴太は、この女子生徒から初めて会った時の敵意や嫌悪感が消えているのを感じていた。
「あんたたち、やるわねって言いに来たのよ。最初は、何でこんなやつらが入学してるのって思ってたけど、確かにこの格式高い聖ギルデオン校に入学するだけの実力はあるみたいね。少しは認めてあげるわ。」
パンカジュは不意を突かれたように、ポカンとしている。
「はあ、そりゃどうも・・・。」
パンカジュに向かって右手を差し出すと、この新たな友は自ら名乗った。
「あたしはアメリアよ。ま、そうそうあなたたちとつるむ気は無いけど、よろしく。」
彼女なりのプライドのようなものだろうか、負の感情こそ感じられないものの、女王のような気取った態度は崩そうとしない。
「それと・・・昨日は助けに入れなくて、ごめんなさい。私、あの人怖くて。」
「ふん、そんなこと気にするやつかよ。てゆーか、お前みたいなやつにも怖いやつなんているのかよ。」
晴太は、あまりに非友好的なパンカジュに業を煮やして、ついつい口を出してしまった。
「もう、パンカジュったら!せっかく友達になれそうなのに、そんな態度でどうするのさ。」
「友達だって?晴太、いいか?こいつらは俺たちを見下してやがるんだ。」
とパンカジュ。
「あのねえ、そういう態度が余計に争いを招くんだよ。助けようとしてくれたって言ったじゃないか。ほら、握手して。」
パンカジュは渋々アメリアに右手を差し出す。アメリアはフンと鼻を鳴らして、パンカジュと握手を交わした。
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