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最初の授業
五人が古ぼけた教室に入ると、他の生徒はみな席についていた。チラチラと他の生徒から見られているのを五人とも感じている。コソコソと耳打ちしあっている新入生もいる。もちろん、その全員が白い肌に彫りの深い顔立ちをしている。オマールがみんなの視線を感じるたびに、腕を組んでいらいらと貧乏ゆすりをしている。
「お前たち、チラチラ人の顔を見てどういうつもりだ。何か言いたいことがあるなら、言ったらどうだ。」
王族を思わせる威厳のある声が教室中に通ると、一気に静かになった。
「ちょっと、オマール。」
ヴィオラがオマールを腕で小突き、ひそひそ声でなだめる。
「ほっときなさいよ。別になんかされたわけじゃないんだから。」
「しかし、無礼だろう。ひそひそと人のことを噂しあって。」
ヴィオラとは反対にオマールは声を抑える気もない。教室は一気にピリピリした空気に包まれた。晴太も状況を良くしたいと思ったが、オマールに何を言えばいいのか分からなかった。
「皆さん、授業を始める準備はできていますか?」
一斉に教室の前の教卓に全員が注目した。いつの間に教室に来ていたのか誰も気づかなかった。これも魔法なのかな、と晴太は感心して見ていた。
「召喚魔法の授業を担当するネモフィラと申します。前日の式典で皆様覚え遊ばしていることとは存じますが、改めてよろしくお願いします。」
なんとなくこの人が話していると、教室の空気が引き締まるような気がする。これも、ニキアスのオーラと同じかもしれない。
「今日は早速ですが、皆さんに簡単な召喚を行ってもらおうかと思います。ところで、召喚魔法が得意だという生徒、あるいはもうすでにある程度の知識を持っているという生徒はいますか?いたら、挙手していただけますか。」
教室はシーンと静まり返った。晴太は内心、このクラスでは一番僕が召喚魔法が上手いと思うなと考えていた。だが、まだ四人しか友達がいないのに手を上げるのもためらわれた。教科書をパラパラとめくりながら、知らないふりをしていた。
「おやおや、いないのですか?ぜひもう一度昨日の立派な大蛇にお目にかかりたいと思っていたのですが・・・残念ですね。」
晴太はごくりと唾を飲み込んだ。まずい、この分だと昨日のうわばみを召喚したのが自分だとバレているかもしれない。
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