入学式前夜

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 ロイド校長はため息をついた。もし、何も見つからなければ自然と元いた場所やいたい場所に散らばっていくことだろう。その点でも言い方は悪いかもしれないが、ゴーストたちは便利だ。どっと魔力を消耗すること以外は。 明日の式典で眠りこんでしまうかもしれない。若い時は徹夜でシャトランゼや賭け事、バルで飲み明かすことも平気だったのに、近頃はどうも体が言うことを聞かなくなってくる。とはいえ、世界最高の魔力は未だ健在なわけであるが。すっかり頭が覚醒してしまったが、眠りの魔法は使わずになんとか年寄りらしい浅い眠りにつこうと思った。まあ、千年近くもこの校舎を守ってきた翼竜だって、間違えることはあるわい、と自分に言い聞かせて無理やり眠ろうとした。がどうしてもうまくいかない。考え事があって眠れないときには考えつかれるまで、考え続けるのが一番じゃなと思い、それからはおもむくままに思考をあちこちへと走らせた。それはさながら、校長自身の魔法にも似ていた。 校長に赴任してから数十年、警備を司る生物たちが報告を怠ったことはもちろん、誤った報告をしたことすら一度も無い。もし、その侵入者というのが、学園に害なす存在だとしたなら、早急に対処せねばならない。入学式早々、生徒たちの身に何か起きたと考えると、背筋も凍る思いだった。ただ一方、この千年間というもの、聖ギルデオン校は侵入者を許したことは一度もない。少なくとも公式記録ではそうなっている。番人は翼竜であったり、ヒッポグリフであったり、時にはドラゴンが守っていたこともあったそうだが、侵入者は番人を突破できなかったし、仮に巧妙な方法で校舎内に侵入したとしても、即刻全教員に知らされお縄となっている。近いうちに、学校のセキュリティーは見直す必要があるかなと思い、その案を考えているうちにいつの間にか眠りについていた。
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