入学式の朝

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入学式の朝

 聖ギルデオン学園入学式の朝は早い。それは、第三〇二五回を迎える今年も全く同じである。会場設営は昨日のうちに全教員とドワーフやサジタリウスのスタッフたちで椅子並べやタペストリーなど、寸分の隙も無く正確に式典に向けて準備が行われていたが、(美的感覚について最も優れている生き物の一つが間違いなくドワーフである。財宝に目が無いばかりか、どうすれば美しく見えるか、ということを熟知している。)入学式当日は、何百名という新入生を受け入れなければならない。日中のガードマン、サジタリウスも新入生に紛れて部外者が侵入してこないか目を光らせなければならない。世界の教育施設の中でも、政府機関なみに強固なセキュリティを誇っていると名高い聖ギルデオン学園が最も手薄になる瞬間が入学式だと言われている。何しろ、教員たちも碌に顔と名前が一致していない新入生を大勢迎え入れるのである。一応、サジタリウスの並外れた記憶力を以てして、学園に入る前に確認は行っているが、新入生たちはまず、その警備の厳重さに驚くこととなる。
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