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跳ね橋を渡りきり正門をくぐると、両側にずらりと弓矢を装備したサジタリウスが整列し、指一本動かさず新入生を迎え入れる。だが実際は、新入生以外のものが紛れ込んでいないかをチェックしている。正門に配備されたこの十頭のサジタリウスは五三七名の新入生を全員頭に叩き込んでいる上、校内のインターネットで、新入生名簿にアクセスしている。もちろん脳内で。その他、目くらましの魔法や変身の魔法は正門から絶え間なく降り注ぐ金色の粉で全て暴露されてしまう。―もちろん、これはかつてピーターパンを飛行させたのと同じ、妖精の粉である。ウェンディの魔法ではないが。無尽蔵の妖精の粉を保有しているのは世界広しといえどもこの学園のみで、二代目の校長が妖精皇オベロンと昵懇であったと語り継がれている。ともあれ、本学の地下には、尽きることのない妖精の粉の壺があるというのが、校長により代々厳重に管理されている。
「すげえ、何だかドキドキしてくるな。」
周りの新入生たちは、ガヤガヤと興奮して憧れの校舎をなるべく目に入れようと馬車の中で、押し合いへし合いしながら騒いでいる。晴太にはチラチラと視線を送ってくることもあるが、特に誰も話しかけてこようとはしない。だから、晴太が何を考えているか、他の生徒は知る由も無かったが、ここにいる誰よりも晴太の方が興奮していた。エウロペアでは随一、全世界でも指折りの魔導学校聖ギルデオンに入学するのは、ワノ国から第一号目の少年がこの晴太である。空港を降りてから聖ギルデオンから馬車で三時間もある最寄り駅に着くまでに見た教会や市役所、噴水や広場などの歴史を感じさせる数々の壮麗な建築物、自分の世界とは全く違う食べ物やあちこちで飛び交う共通語。(実際、聖ギルデオンが世界屈指の魔導学校となった所以は、世界共通語であるエウロペア語圏の学校であるというのが大きな理由である。)テレビや携帯の遠隔魔法を通してしか見たことの無い世界に自分が足を踏み、空気を吸っているという実感が晴太をワクワクさせっぱなしだった。とはいえ、他の新入生たちと上手くやっていけるのだろうか、という不安もあったが。
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