悪役令嬢の母

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「殺せ!」 「王族を誑かそうとした魔女どもを殺せ!」  飛び交う怒号で目が覚めた。うつぶせになっていて身体が痛い。身を起こそうとしたが、首と腕が、何かにがっちりとつかまれているようで、自由にならなかった。 「お目覚めですか? お母様」  嫌味なまでに優しい声色で呼ぶ声で、わたくしは顔を上げる。  太陽の光を背中から浴びて、仁王立ちになり、腕組みしてわたくしを見下ろすのは、娘のアンナ。  そう、わたくしが腹を痛めて産んだ娘の一人。 「いやあああああ!」  隣から絹を引き裂くような悲鳴が聞こえて、視線をそちらに馳せる。 「いやよ! 死にたくない! 死にたくないわああああ!!」  アンナと同じ顔を涙でぐちゃぐちゃにして泣き叫ぶのは、もう一人の娘、ルーエ。首と手首を石の台に拘束されている。その頭上で光るは、鋭く大きな刃。  ここは、断頭台。  そうだ。思い出した。ルーエとわたくしはこれから、魔女として首を落とされるのだ。  アンナの策謀によって。 「全部、貴女が悪いんですのよ、お母様?」  アンナは語る。あくまでも穏やかな声音で。しかし、悪魔のように残忍な笑顔で。  その瞬間、世界が反転し、わたくしの意識はここではないどこかへ飛んだ。
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