2012年9月24日のコカコーラ

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もうすぐ待ちに待った時間がやってくる。 私はワクワクした気持ちを抑え切れず足速になる。その足速で薄暗い階段と廊下を進んでいく。 ようやく目の前に現れた古びたドアを開けると、空を仰ぐことのできる屋上に着いた。屋上には先客がいた。きっと私と同じ目的なのだろう。 「はじめまして、どこから来られたんですか?」先客の横に陣取ると、その先客が話しかけてくる。 「2182年です」そう私が答えると、「ずいぶん未来から来られたんですね、私は2073年です」そうだ、私たちは未来からこの時代に来た。 この時代は2012年9月24日だ。そしてここは都内の目黒区にあるビルの屋上だ。この日、この場所でしか見られない絶景を求めて、私たちは未来からやってきた。 「例のもの持ってきましたか?」もちろんと応えて、私はカバンから例のものを取り出す。それはこの時代でしか売っていないコカコーラの限定瓶だった。 「なんで、この瓶じゃなきゃいけないんでしょうね?」「光の屈折が関係してると聞きましたけど、詳しくは分からないです」 私たちはコカコーラの瓶を屋上の手すりにセットする。縦ではなく横にセットする。中身は空ではダメだ。中のコーラを3分の1ほどは残さないといけない。横に瓶をセットすると、中の茶色い液体が波のように駆けめぐる。 「来ます」その言葉と同時に奇跡が起こる。夕焼けの光が…ダメだ。この奇跡を私は言葉で説明できない。だから写真を貼っておく。 19de376f-1a8c-4a39-89c9-2dba01249512 この奇跡を見るために、今日も未来から人がやってくる。
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