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じっとりと嫌な汗が噴き出しているのは、きっと夏の暑さのせいばかりではない。うまく働かない頭で、リビングを右往左往する。
娘の藍がいなくなった。
昨日の昼過ぎに出ていったきり、丸一日帰ってこない。もう高校三年生とはいえ、さすがにおかしい。それに、あの子は少し人と違うから。
昨夜の九時過ぎに送った『今どこにいるの？』というメッセージには、既読がついているものの、返信の気配がない。
実は夏休みに入ってからここ一週間、出かけるときと帰ってきたとき、食事の挨拶以外はまともに口をきいてくれないし、態度もなんとなく冷たい気がしてはいた。
でも、こんな話題、どうやって切り出せばいいか分からないし、訊いたところで自分に都合のいい答えが返ってくるとも思えない。
なんてあれこれ言い訳しているうちに、家出されてしまったのか。これで、「単なる私の思い過ごし」という一縷の望みも消え去ったわけだ。
どうしよう。警察？ いやいや、早まらないで。落ち着くのよ、私。既読はついてるわけだし、まずはもう一度連絡を――
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