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必死に自分に言い聞かせつつ、ソファーの上に置きっぱなしにしていたスマホを手に取ったとき、図ったようにメッセージの着信音が鳴った。
藍からだ。
【お兄ちゃんのとこだよ。】
あっけらかんとした文面。
あの子には、七歳上の兄、一星がいる。
三年前、大学を卒業して家を出たが、歳の差のせいもあってか昔から藍の面倒をよく見てかわいがってくれ、とても頼りになる存在だ。藍がやっと歩き始めたくらいの時期に私が離婚したので、彼女にとっては父親代わりのような面もあるのかもしれない。
けれど、娘の行動の意図が分からず、画面越しに小首をかしげ、『どうして?』と尋ねた。
【お母さん、私よりお兄ちゃんのほうが好きだよね?】
返ってきた、だけど質問の答えになっていない衝撃的な一文に、そんなこと、と打とうとして、手が止まる。
動揺しているのが、何よりの証拠だ。
【いいの。私だって、仲のいい友だちに対して、あの子よりこの子のほうがいいなって思うこと、あるもん。我が子だからみんな平等だなんて、そんなの嘘っぱちだよ。】
容赦なく畳みかける、容認しながらも突き放すような言葉。
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