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『このアパート、間取り2DKだから一部屋余ってるし、いつまでいるつもりか分かんないけど、歩いて来られる距離なんだから、通学もそれほど大変にはならないだろ?』
銀行員である彼は、ひとり立ちして間もない頃は遠方にいたこともあったが、今春から勤務先が近場になり、実家から徒歩三十分弱行ったところにあるアパートに住んでいる。
「だけど、お弁当とか……」
『あぁ、それも毎朝俺のと一緒に作ればいいから問題なし。寝坊しても購買あるだろうしな』
――そっか。一星、ちゃんと自炊してるのね。
いつの間にか彼も、大人になったようだ。
『なんなら、三者面談とかも俺行くし。もちろん、学校側がいいって言ったらだけど』
三者面談って。そこまでしてくれる兄、なかなかいない気がする。本当に恵まれたものだ。
「でも……」
なおも食い下がると、電話口で彼が苦笑したのが分かった、
『母さん、さっきから否定しかしてないじゃん。何があったか知らないけど、今無理やり帰そうとしても、余計に意地張るだけだと思うぞ? メッセージ返信させるのも一苦労だったんだから。離れてみたら分かることもあるよ、きっと』
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