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【お花に触らせてもらえない。お掃除とレジ打ちばっかり。機械も計算も苦手なのに。】
予想通り、弱音を吐露するメッセージが届いたのは、夏休みが終盤を迎え、藍がバイトを始めて一ヶ月ほどが経った頃だった。
雇われて間もない学生バイトなのだから、まだアレンジはさせてもらえないだろうし、彼女には軽い学習障がいがあるので、左脳を使うような仕事は骨が折れるだろう。
――ほら見なさい。
心の中でほくそ笑む。
――私はあの子のことならなんだって分かるの。だって母親なんだもの。
そんな密かな優越感に浸っていたが、
【「こんなにやってるのに」っていうお母さんの口癖、嫌いだったけど、今ならちょっと分かる。頑張ってるのに認められないって、辛いね。】
続けて送られてきた言葉に、はっと目が覚めたような気がした。
胸をしめる、切なさの入り混じった罪悪感。
――離れてみたら分かることもあるよ、きっと。
思い出すのは、一星の言葉、
そうだ。藍はこういう子だった。
不器用で、人より理解するのに時間はかかるけれど、ひとたび心にしみれば、素直に寄り添ってくれる優しい子。
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