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「『お母さん』を探すのを手伝って欲しいの」  唐突な(あい)の台詞に、目の前の婚約者は一瞬言葉を失ったように見えた。 「……え、と。君のお母さんて亡くなってる、よね? あ、もしかしてお母さんの想い出を辿る旅とかそういう意味?」  ようやく口を開いた貴幸(たかゆき)は、藍の真意を量りかねているらしく探るように返して来る。 「ううん、違う。亡くなった母とは別に、──私には『本当のお母さん』がいるんじゃないかって。夢を見たのよ」  藍は真顔のまま静かに続けた。 「夢って──」 「真面目に聞いて! 夢、だけじゃないの」  笑い混じりで彼が言い掛けるのに、強い調子で言葉を被せる。 「ごめん。僕は別に茶化したわけじゃなくて、あんまり突拍子もなかったからつい。……だけど、藍が真剣なのに失礼だったね」  謝ってくれる貴幸に、藍も慌てて頭を下げた。 「……私も突っ掛かるみたいな言い方してごめんなさい。話、聞いてもらえる?」 「もちろん」  変わらず穏やかな調子の彼に軽く顎を引いて感謝を示す。
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