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「えっ?」
「たまたまかもしれないし、俺の自意識過剰かもしれないけど……お母さんが俺を試したのかなって」
「信じてくれるの?」
私が驚いて昌樹を見つめると、戸惑うような照れたような笑みを昌樹が浮かべた。
「正直言うと、まだ信じ切れてないけれど……でも、君の狼狽える姿を見たら、本当にお母さんかもしれないって思って――」
気付けばお母さんを助けなきゃと、身体が動いていたのだと昌樹は言った。
「……ありがとう。本当に」
私の声は震えていた。昌樹がとっさに行動してくれたから、母は助かったのだ。
昌樹の言うとおり、もしかすると昌樹を試したのかもしれない。彼が本当に優しい人なのか、私にふさわしい人なのかと――
それとも、母は彼を簡単に手放すなと、自分の命を擲ってまで、伝えたかったのだろうか。
どちらにしても、今までにない出来事に私の目から涙が零れだしていた。それは安堵とも、母からの愛を感じたからとも区別は付きかねた。
「とにかく無事で良かった」
昌樹の言葉に私は、水槽に視線を向けて頷く。
何かを察したのか、お母さんが水面に浮上し、小さく飛び跳ねていた。
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