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課題
「勿論です。」
ミカヅキの瞳を真っ直ぐ見つめ返す。
「じゃあ、早速聞かせてもらえるかな。お前が成した事について。」
ヨツハは頷くと、徐に手をミカヅキの方へ差し出す。呪文を唱えると、一瞬の閃光の後に巨大な杖が現れた。2本の樹が絡み合ったような形のその杖は、ヨツハの身長よりも少し長い程の長さだ。
「ラモルドラの杖です。師匠に言われた通り、見つけ出しました。」
どうやら、あの杖を世界のどこかから見つけ出すことが課題だったらしい。
「ふむ。よく見つけたな。」
「杖自身の魔力を辿って探し出しました。けど全く同じ魔力のダミーがそこら中にばら撒かれていたので、しらみ潰しに当たりました。」
「直ぐに見つかってはつまらんからな。魔力感知の特訓代わりさ。」
「…それはいいんですけど。何でダミーが全部自立式の使い魔なんですか。毎回襲われたんですけど。」
「それは、戦闘に慣れる訓練だな。ついでに私も戦闘データが取れるしな。一石二鳥ではないか。」
ミカヅキはなんて事ない様に言うが、あれらは、並の術士なら"死んでもおかしくないレベル"の使い魔だった。彼女は、物事の基準を自分の実力ベースで考える悪癖がある。先程の巨漢も飲酒のペースを彼女に合わせた結果、あの様な惨状になってしまった。
「…もう、いいです。では、もう一つの課題ですが。」
ヨツハは、言葉を切ると私に視線を向けて続けた。ミカヅキも私を見つめている。
「彼女か。」
「ええ。彼女です。彼女は赤の他人に呪われて"獣"になっていた。その呪いを僕が解呪しました。今では、すっかり人の形を取り戻しています。」
ミカヅキの瞳に一瞬悲壮感の様なものを感じたが、次の瞬間には元の表情に戻っていた。気のせいだったのだろうか。
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