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この瞬間が最後?
「なら、帰らなきゃいい。」
気がついた時には、
俺は彼女の手をつかんでしまっていたが、すぐに顔を背けられた。
この世の中でようやく、誰もが知ってくれる俳優になった俺だった。
そして…
そんな俺を応援していると撮影現場に引き寄せられるように、
立ち止まって見学をしていた彼女だった。
俺も…。
そして、彼女にも家庭があった。
「…帰れなくなった、ふう。あとは?考えましたか?」
振り返った彼女は、穏やかな表情だった。
息苦しく吐き出される吐息の流れの行き先を、俺はたどりながら目の前にいる彼女だけを俺は見つめた。
この時を終わらせたくない、
どうすれば?
引き留められる?
引き留めて何をする?
何か…なければ、帰らせるしか?
いや、俺に聞きたい事はきっとあるだろう、たぶん。
そんなことを頭の中で忙しく、駆け巡らせている俺とは違って…
彼女は、どんどん冷静さをとりもどしていた。
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