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無言で私のことを抱きしめていた理一さんが、しばらくしてから腕を解いてベッドの淵に腰かけた。
なんとなく気恥ずかしさもあって、私も理一さんも隣同士に座ったまま下を向く。
長く続いた沈黙のあとに、理一さんが俯く私の顔を下からそっと覗き込んできた。
「未知、おれに隠してることあるよね?」
「隠してること……」
小さく呟きながら視線をそらそうとすると、理一さんが膝に置かれた私の手を握る。
「未知、妊娠してない?」
理一さんが確信を持ったような声で訊ねてきたから、少し焦った。
「どうして……」
「この頃いつも眠そうだったし、普段はあんまり口にしないものを好んで飲んだり食べたりしてたでしょ。炭酸ジュースとか、ゼリーとか。それに、食欲もあんまりなさそうだったよね。だからもしかして、つわりなのかなって」
理一さんがどうしてつわりの症状になんか詳しいのだろう。
一瞬そう思ったけれど、すぐに理一さんが私よりも子育て経験が長いことを思い出した。
理一さんは、理玖のときに奥さんのつわりや妊娠を経験してる。きっと亡くなった奥さんのつわりが私と似たような症状だったのだろう。
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